ピュアスノーの花束と消えたルーラストーン
日曜日の午前中、みるくは白いブラウスに薄桃色のカーディガンを羽織り、机の前でZOOMの集会に参加していた。隣には湯気の消えた紅茶と、途中まで食べた小さなあんパンが置かれている。集会が終わると肩の力を抜き、残っていた紅茶を飲んでからドラクエを始めた。
「午後はゆっくり、まったり遊びましょう」
みるくはピュアスノーリリィを三十本そろえ、キラキラ輝くピュアスノーの花束に交換した。白い花びらを重ねた花束は、桃色のリボンまでついており、白と薄桃色のドレスを着たみるくによく似合っている。続いてブラックリリィも三十本買い集めたため、財布からは合計四十六万八千三百六十八ゴールドが飛んでいった。それでも二色の花束を飾れば部屋が華やかになると考え、みるくは胸を弾ませながら収納家具を開いた。
「えっ、もうあるじゃない!」
収納の中には、以前に交換したピュアスノーの花束がきちんと収まっていた。しかも材料の花は、畑で自分が水をやり、肥料まで与えて育てたものだった。みるくはコントローラーを握ったまま固まり、机の上に落ちていたあんパンの胡麻を一本ずつ指で集めた。
「どじー。ないと思って買ったのに、自分で育てていたことまで忘れるなんて」
買ってしまったものは戻せないので、余った花束はサブキャラのにいなの家へ運ぶことにした。にいなは、以前ひまりと同じ番地に住んでいたはずである。みるくは白い靴を鳴らして外へ飛び出し、いつものようにルーラストーンを掲げた。
「さあ、にいなの家へ……あれ? ない。ルーラがない!」
ひまりがマイタウンへ引っ越したとき、登録していた石まで書き換えていたのである。空欄を何度見ても住所は戻ってこず、みるくは慌てて手帳や手紙を開いた。紫の藤が揺れる自宅を走り回りながら、古い記録を一つずつ確かめる姿は、花束を届ける冒険者というより迷子を捜す町内会役員だった。
「にいな、あなたはいったいどこに住んでいるのよ。家主なのに住所不明ってどういうこと!」
ようやく古い住所を発見すると、みるくは花束を抱えてにいなの家へ向かった。室内に置かれたピュアスノーの花束は、木の床の上で金色の光を弾き、白い花びらからは冷たい雪を思わせる清らかな香りが漂ってくる。予定外の出費も消えたルーラストーンも、無事に飾れた花束を見れば笑い話になった。
「これで、にいなの家もキラキラね。次からは買う前に収納を見ます。たぶん!」
窓の外では午後の日差しが屋根を明るく照らしていた。みるくは冷蔵庫から麦茶を出し、残しておいたあんパンをかじりながら、次はどこへ遊びに行こうかと地図を開いた。日曜日の午後はまだ長く、慌てたり笑ったりするドラクエライフは、これからゆっくり始まるところだった。