高額キャラメルと残り七つの試練
みるくは旅人バザーの前で、白いロングスカートの裾を両手で握りしめた。金色の帯と黒い模様が入った上品な服を選び、今日は落ち着いて買い物をするつもりだったが、キャラメルリップ一つの値段を見た途端、背筋が固まった。橙色の花の小さな写真の横には、気軽に押せるとは思えない金額が並んでいる。
「でたー、高額アイテム。ガクガクブルブル」
キャラメルの花束を手に入れるには、キャラメルリップが三十本必要だった。しかし、まとめて三十本という都合のよい出品はなく、一つ、四つ、四つ、また四つと、細かな束を買い集めなければならない。みるくは購入するたびに帳面へ数を書き、途中で分からなくなると最初から指を折って数え直した。
「一、五、九、十三、十七……待って、今ので二十だったかしら」
現実の机には、午後のおやつに食べたカレーパンの紙袋と、氷がすっかり溶けた麦茶が置かれていた。袋の底に落ちていた衣をつまんで食べると、少し冷えた油と香辛料の味が舌に残った。口を動かしながらもう一度購入履歴を確かめ、ようやく三十本になっていることを確認した。
「三十本ある。今度こそ間違いない。たぶんじゃなくて、本当にある!」
使った金額は、合計七十六万八千九百九十ゴールドだった。数字を声に出したみるくは、コントローラーを膝へ置き、両手で頬を挟んだ。花束一つ分とは思えない出費だったが、ここまで集めて交換しないという選択肢は、もう残っていなかった。
「七十六万八千九百九十ゴールド……花束の中に金貨が入っていても驚かないわよ」
交換してもらったキャラメルの花束は、ふっくらした橙色の花を桃色のリボンで包み、周囲へ金色の光を散らしていた。甘く焦がした砂糖を思わせる色は、落ち着いた木の壁によく映える。みるくが同じ色の花束を並べて中央に立つと、部屋の中が高級な菓子店のようになった。
「これはキャラメル味に見えるわね。かじったら駄目なのかしら」
「お花です。食べられません」
自分で答えてから、みるくは橙色の花へ顔を近づけた。花束に込められた言葉は「信頼」であり、高額な代金に震えながらも三十本をそろえた自分を、今日は少しくらい信頼してよい気がした。買った本数を間違えず、すでに持っている花束との重複もないことまで確認すると、みるくはようやく胸を張った。
「これで五十四種類中、四十七種類目。あと何種類?」
帳面から数えてみると、残りは七種類だった。十一でも十でもなく、ゴールまであと七つである。みるくはその数字を大きな丸で囲み、勢い余って帳面の端へキャラメル色の線を引いた。
「あと七種類! ここまで来たら、もう引き返せないわ」
ところが次の花の相場を調べようとした瞬間、みるくの指が止まった。また高額な花が待っていたら、今度こそ財布が「全滅」のしぐさを始めるかもしれない。それでも目の前のキャラメルの花束がキラキラ輝くと、次の色も並べてみたいという気持ちがむくむくと湧いてきた。
「今日は検索するだけ。買わないわよ。絶対に買わないからね」
そう宣言したみるくは、残り七種類のうち最初の花を旅人バザーへ入力した。部屋にはカレーパンの匂いが残り、橙色の花束は何も知らない顔で輝いている。五十四種類をそろえる冒険は、みるくのゴールドと決意を試しながら、いよいよ最後の七つへ突入した。