四百四十一枚目のグロリア
みるくはバトル・ルネッサンスの実績一覧を開き、集めたグロリアの総数を確認した。画面には「四百四十一枚」と表示されており、白と金のドレスを着たみるくは、冷たいアイスコーヒーのグラスを持ったまま胸を張った。布団を干し、朝食を作り、その合間にも超強い敵を倒してきた成果なのだから、さぞ立派な報酬が待っているはずだと思った。
「四百四十一枚なのら。これは黄金の花びらが山ほどもらえる数なのら!」
報酬表を上から見ていくと、十枚では緑の錬金石、二十枚では夢のアクセサリー箱、三十枚ではメダル百枚チケットが用意されていた。五十枚では黄金の花びらが十個もらえ、六十枚と八十枚にはスキルブックまで並んでいる。みるくは期待しながら表を下へ動かし、まだ温かい目玉焼きを載せたトーストをひと口かじった。
「百枚を超えても報酬が続いているのら。運営さんは太っ腹なのら!」
ところが、百十枚からはメダル百枚チケットと黄金の花びらが交互に続き、最後の報酬は三百枚の黄金の花びら三個だった。その下には三百十枚も四百枚もなく、四百四十一枚という数字を受け止める欄さえ見当たらない。みるくはバターのついた指を布巾で拭き、画面を何度も上下させた。
「三百枚で終わっているのら。四百四十一枚の私は、どこへ行けばいいのら?」
「百四十一枚も多く集めたんだな」と仲間が言った。
「その百四十一枚に、黄金の花びらを三個ずつお願いしたいのら!」
みるくは念のため、これまで受け取った報酬も確認した。しかし三百枚までの品は、ずいぶん前にすべて受け取っている。散らかった机の上には昔の釣り報酬を書いた帳面があり、端には醤油の染みと、食べかけのアジの開きから落ちた小骨が挟まっていた。
「ひょっとして、釣りと同じなのら。どれだけ頑張っても、上限を超えたら新しい報酬はないのら?」
「報酬表を見る限り、三百枚までだな」
「では、四百四十一枚目は名誉だけなのら?」
それでも、みるくが集めた百四十一枚が消えたわけではなかった。魔勇者アンルシア3を二分以内に倒し、恐怖の化身を布団と朝食の合間に倒し、カカロンが蘇生してくれない戦いにも再挑戦した記録である。報酬箱には入らなくても、空白だった実績が達成へ変わるたび、帳面には冒険した日の暮らしまで残っていた。
「黄金の花びらはもらえなくても、クリアの文字は増えたのら」
「それが四百四十一枚分の成果だな」
「でも、黄金の花びらも欲しいのら。名誉は店で売れないのら!」
みるくはアイスコーヒーを飲み干し、氷をからから鳴らした。ベランダでは干した布団が風に揺れ、台所には焼いたパンと卵の匂いが残っている。報酬が三百枚で終わっていても、バージョン1の空白を全部クリアする楽しみまでは終わっていない。みるくは四百四十一という数字を帳面へ大きく書き、横に丸を三つつけた。
「報酬がなくても挑戦するのら。ただし、四百五十枚の記念品くらいは、こっそり置いておいてほしいのら!」