白銀の吟遊詩人と消えた金貨袋
胸の奥がチクチクと痛んで思わず眉根を寄せ、みるくは空に浮かぶ不思議な島を見上げた。抜けるような青空からは爽やかな風が吹き抜け、彼女の着ている銀糸のフリルドレスの裾をパタパタと揺らしている。昨日の夜に机の端へ置きっぱなしにして冷めきった味噌汁の椀を頭の隅で思い出しながら、今日こそあの豪華な庭具とフカフカのソファをマイタウンに並べるはずだったのにと唇を尖らせた。
「ねえ聞いてよ、二十六日に入るはずだった金貨が、何度魔法の帳面を開いても真っ白のままなの!」
隣にいた旅の仲間は、焼き立ての熱いジャガイモにバターを塗りたくってハフハフと口に運びながら、みるくの純白のロングブーツをしげしげと眺めた。周りには色鮮やかなキノコの木々が生い茂り、甘い花の香りと屋台の香ばしい煙が入り混じって漂っている。部屋の洗濯カゴから溢れかえった靴下の山を片付けるのも忘れて預かり所へ走った自分の慌てぶりを反省しつつ、みるくは二本の短剣の柄をぎゅっと握りしめて相棒の反応を待った。
「あはは、またいつもの取らぬ狸の皮算用をやらかしたんだね」
カッと頬が熱くなって思わず足元の小石を爪先で蹴飛ばし、みるくはぷうっと両の頬を膨らませた。青空にぽっかりと浮かぶ遺跡からはキラキラと光の粉が降り注ぎ、彼女の頭に飾られた銀の花飾りがチカチカと眩しく照り返している。いつもお財布を落としたり預かり所のカウンターにカバンを置き忘れたりする自分の癖を棚に上げつつ、次の振り込み予定日である九月十七日までの長すぎる日数を指折り数えて大きくため息をついた。
「笑い事じゃないわよ、あれも欲しいこれも欲しいって、物欲の炎がメラメラ燃えて止まらないんだから!」
両手を頭の上で激しく振り回して地団駄を踏み、みるくは広がる大自然の真ん中でくるりと一回転した。近くの露店で売られている甘い香りのシナモンロールの匂いが鼻先をくすぐり、ぐうとお腹が可愛らしい音を立てる。散らかった机の上に放置してきた買い出しメモの殴り書きを脳裏に浮かべながら、彼女は自制心という名の見えない敵に向かって高らかに宣言するように叫んだ。
「思い込みの力って本当に恐ろしいわ、来月まで唇に歌を抱いて我慢大会の始まりよ!」
相棒は吹き出しながら半分に割ったホクホクのジャガイモを差し出し、みるくの白い手袋の上へとポンと乗せてくれた。口いっぱいに広がる塩気とバターのコクを味わいながら、彼女の表情はすっかり明るさを取り戻し、二人は笑い声を響かせながら次の目的地へと歩き始めた。
「まあいいわ、美味しいおやつがあれば、来月までいくらでも待ってあげるんだから!」