冒険日誌の七不思議――五十一人目のフレンド
白いレースのワンピースに薄紫のブーツを合わせたみるくは、木造の家の前でフレンドと並び、両手を頬へ当てるしぐさをした。青空の下では白い天馬が翼を広げ、庭の草からは夏の日差しに温められた青臭い匂いが立っていた。撮影を終えて家へ戻ると、みるくは冷蔵庫から麦茶を出し、昨日買ったあんパンをかじりながら冒険日誌を書いた。机には使いかけの目薬と丸めたティッシュが転がり、扇風機は首を振るたびにカタカタと鳴った。
「今日はフレンドさんと写真を撮りました。天馬も飛び入り参加して、楽しかったのら」
投稿ボタンを押すと、十分もしないうちに赤い通知が灯った。いいねは十、二十、三十と増え、夜には五十になったので、みるくは食べかけのあんパンを皿へ置いて一人ずつ名前を確かめた。ところが、二百人近くいるフレンドの名前は一つもなく、いいねをくれた五十人は全員知らない冒険者だった。
「またなのら。どうしてフレンドさんは一人も押さないの?」
翌朝、酒場でこの話をすると、黄色い上着を着たプクリポの記者が、焼き魚定食の大根おろしを箸で崩しながら身を乗り出した。彼はアストルティアで起きる奇妙な噂を集めており、味噌汁をすすってから声を低くした。酒場には炭火と魚の皮が焦げる匂いが漂い、隣の席では戦士が濡れた靴下を暖炉の前に干していた。
「それは冒険日誌の七不思議、五十一人目のフレンドだよ。いいねが五十で止まった夜、日誌をもう一度開いてごらん」
その晩、みるくは白いパジャマに着替え、ぬるくなった麦茶を机の端へ置いて日誌を開いた。いいねは五十のままだったが、一番下に見覚えのない名前が薄く浮かんでいた。『ずっと見ているフレンド』という灰色の文字で、押していないはずのフレンド限定公開の印まで付いていた。
「誰なのら。うちのフレンド一覧には、そんな人はいないよ」
返事の代わりに、家の外から天馬の蹄が石畳を打つ音がした。窓を開けると、昼間の写真と同じ場所に白い天馬が浮かび、その背中には顔の見えない冒険者が座っていた。冒険者はゆっくり手を上げ、みるくの家を指さした。
「いいねを押さなくても、見ている者はいる。だが、名前を残さない者ばかりを数えてはいけない」
翌朝、五十一人目の名前は消えていたが、日誌の写真には一人多く写っていた。みるくとフレンドの間から、灰色の手袋をした小さな手だけがのぞいていたのである。みるくは冷めた味噌汁を温め直し、湯気で曇った眼鏡を拭いてから、次の日誌を書き始めた。
「五十人の知らない人さん、見つけてくれてありがとうなのら。でも、二百人近いフレンドさんたち。たまには足跡くらい残してね。でないと今夜、五十一人目がそちらへ会いに行くかもしれませんよ」