黄金の花束ロードができるまで
旅人バザーから引き出してきた預金通帳の残高の桁が激しく減り、胸の鼓動が耳の奥でドクドクと鳴り響いた。テーブルの上には食べかけのチーズトーストの焦げた匂いが漂い、インクで汚れた帳面には三十種類もの花の名前と莫大な購入金額が走り書きされている。花束を一つ作るだけでも同じ花が三十本も必要で、それを全五十四種類分も揃えたのだから財布が空っぽになるのも当然だと爪を噛みながら納得するしかなかった。
「見てよこれ、オーロラカメリアもブラッドカメリアも全部使い切って、総額千五百万ゴールドが完全に消し飛んだわ!」
駆けつけてくれたフレンドのミナは、着崩した聖賢者のローブの裾をパタパタと手で払いながら、両目をまん丸に見開いて固まった。玄関脇には昨日の雨で湿ったままの麻の洗濯物が山積みになっており、台所からは沸かし直したハーブティーの湯気がほんのりと甘い湯気を立ちのぼらせている。職人ギルドで買い込んできた高級なリボンと包装紙を床一面に広げながら、これはアストルティア中で一番豪快な散財遊びに違いないとニヤつく口元を押さえた。
「冗談でしょ、家が一軒どころか高級装備が何セットも買えちゃう額を一瞬で束ねちゃうなんて、本当に頭のネジがどこかへ飛んでいっちゃったんじゃないの?」
指先を真っ赤なバラの棘でチクッと刺しながら、出来上がった巨大な花束家具を広い板張りの床へと一つずつ丁寧に並べていった。窓の外からはオルフェアの陽気な風が吹き込んできて、テーブルの端に置きっぱなしの冷めたミルクティーの表面を小さく揺らしている。三十本の花が集まって眩い光の粉をまき散らす花束が十個、二十個と増えていくにつれ、これだけの数を揃えるために朝から何十回もポストとバザーを往復した足の重みも吹き飛んでしまいそうだった。
「ほら手伝って、壁際からグラデーションになるように並べるから、そっちのスカイブルーカメリアの束を持ってきて!」
部屋の両脇を埋め尽くした五十四種類の特大花束が一斉にキラキラと金色の粒子を放ち始めると、思わず息を呑んで足が床に縫い付けられたようになった。部屋中が甘く濃厚な花の香りで満ちあふれ、白と赤のきらびやかなロリィタ風ドレスを着た自分の姿と、ベレー帽をかぶったミナの姿が、まるで光のトンネルの真ん中に立っているかのように黄金色に照らし出されている。何日もかけて金策した日々の疲れなど眩しい輝きの中にすっかり溶けて消えてしまったのだと感じながら、広角レンズのカメラを構えて満面の笑みを作った。
「やったあ、ついに完成したよ、世界で一番贅沢な花束のお部屋で最高の記念写真を撮ろう!」