禾乃登――食いしん坊みるくの収穫祭
禾乃登を迎えたアストルティアは、稲穂も木の実もふっくらと実り、町じゅうがおいしい匂いで満たされていた。深いボルドーと黒の服に金色の縁取りを輝かせたみるくは、赤や黄色に染まった木々の下を弾むように歩いた。朝ごはんのパン屑を襟につけたまま、大きな籠を両手で抱えている。
「えへへっ。今日は収穫祭なのでしゅ。お腹いっぱい食べるのら!」
広場では、料理人のポポルが茸汁の大鍋をかき混ぜていた。焼き芋の甘い匂い、炊きたての新米の湯気、脂のはぜる秋刀魚の音が、みるくの鼻と耳を次々にくすぐる。みるくが茸汁へ手を伸ばすと、ポポルは木の匙でその手を軽く叩いた。
「つまみ食いは禁止だ。裏山の黄金栗を採ってきたら、好きなだけ食わせてやる」
「一個採ればいいのら?」
「籠いっぱいだ」
みるくは口を尖らせたが、焼き芋を一本だけ袖へ隠して裏山へ向かった。歩きながら食べようと皮をむくと、ほくほくした黄色い実から白い湯気が上がり、指先が温かくなる。ところが甘い匂いにつられ、茂みから大きな栗鼠の魔物が現れた。
「その芋をよこせ!」
「これは、みるくのお昼なのでしゅ!」
栗鼠は頬を膨らませ、黄金栗の木へ駆け上がった。枝を激しく揺すると、硬い毬栗が雨のように降ってくる。みるくは籠を頭へかぶって逃げ回ったが、籠の中へ黄金栗が次々に転がり込み、あっという間にいっぱいになった。
「わあっ、痛いけど大収穫なのら!」
みるくが焼き芋を半分差し出すと、栗鼠は機嫌を直し、残りの栗まで拾ってくれた。二人で町へ戻るころには、みるくの服には枯れ葉が三枚つき、長靴の中には小石が一つ入り込んでいた。それでも籠から漂う栗の香りを嗅ぐたび、足取りは軽くなった。
「約束どおり持ってきたのら。さあ、ごちそうをいただくのでしゅ!」
ポポルは黄金栗を新米と一緒に炊き、茸汁と秋刀魚を食卓へ並べた。みるくは栗ご飯を頬いっぱいに詰め、茸汁をすすり、香ばしい秋刀魚へ大根おろしを山ほど載せた。栗鼠も椅子の下で焼き芋をかじっている。
「禾乃登って、最高なのでしゅ。実ったものは、みんなで食べるともっとおいしいのら!」
みるくは二杯目の栗ご飯を差し出した。ポポルが呆れて茶碗を受け取ると、収穫祭の鐘が秋空へ高く鳴り響いた。