秋霖と、赤い葉っぱの宝物
秋霖の雨が、アストルティアの街路を細い糸のように濡らしていた。みるくは生成り色の花柄ブラウスに灰色の短いズボンを合わせ、青いリボンで髪を結んでいる。隣を歩くルナは、鳥の羽を縫いつけた茶色の服の裾を絞りながら、道端のアメリカンハナミヅキを見上げた。緑だった葉は、端からほのかな赤紫色へ変わり始めている。
「葉っぱさん、雨に濡れて恥ずかしくなったのでしゅか?」
「違うよ。寒くなって、緑の色が少しずつ消えているんだって」
みるくは納得できず、頬をふくらませた。朝食に食べた栗のはちみつパンの甘い匂いが、肩から下げた鞄にまだ残っている。葉が赤くなる理由を確かめれば、おいしい宝物も見つかる気がした。
「では、赤色を作っている妖精を探すのでしゅ!」
二人が並木道の奥へ進むと、石畳の排水溝から金色の光が漏れていた。みるくが濡れた落ち葉をどけると、親指ほどの葉っぱ妖精が、砂糖の袋を抱えて震えている。雨水で袋が破れ、中の甘い粒が排水溝へ流れかけていた。みるくは慌ててハンカチを広げたが、それは昨日こぼしたミルクティーの染みが残る、お気に入りの一枚だった。
「汚れていても、穴は開いていないのでしゅ。これを使ってください!」
「この糖が葉に残らなければ、赤いアントシアニンを作れないのです」
ルナが袋を包み直し、みるくは妖精をハナミヅキの枝まで運んだ。冷たい雨が首筋へ入り、靴の中では靴下がぐしゅぐしゅ鳴ったが、枝に届いた妖精が杖を振ると、薄緑の葉へ赤色がじわりと広がった。黄色いカロテノイドも顔を出し、並木道は赤、黄、橙のまだら模様に変わっていく。湿った土と落ち葉の匂いに混じり、どこか焼き芋に似た香りが漂ってきた。
「宝物は、葉っぱの色だったのでしゅね」
「いいえ。お礼に秋の実りをご用意しました」
妖精が指したベンチには、焼き栗とサツマイモのスープが置かれていた。二人は白い橋の下で雨宿りし、温かなスープを半分ずつ飲んだ。みるくは舌をやけどして涙目になりながらも、最後の栗をルナへ差し出した。
「半分こすると、秋は二倍おいしいのでしゅ」
「計算は間違っているけど、今日はそれでいいよ」
帰り道、秋霖はまだ降り続いていた。それでもアメリカンハナミヅキは朝より少し赤くなり、みるくの濡れたハンカチにも一枚の紅葉が張りついている。みるくはそれを剥がさず、明日の朝まで乾かして、冒険帳のいちばん新しいページへ挟むことにした。