ポルテのグルめぐり机と、五十四の花束
水槽を片づけたみるくは、黒い床の真ん中で赤い靴をそろえ、空いた場所を何度も見回した。今日は黒地に金の飾りが入った秋色の上着で、白い髪には赤いリボンを結んでいる。窓の外は藍色の夜なのに、庭から金木犀の甘い香りが入り、机の端に置いた焼き芋からは湯気が細く上がっていた。
「これで置けるのら。ずっと飾りたかった、ポルテのグルめぐり机なのら。しかも、ひとつじゃなくてAからEまでなのら!」
みるくは五つの机を長く並べ、料理の皿や小瓶の向きを一つずつ整えた。後ろには白、桃、青、紫、黄色と、五十四種類の花束が店のように並び、その間から月見草と秋桜が顔を出している。最後の椅子を置いた瞬間、みるくが走ろうとしたのに、赤い靴は床へ貼りついたように動かなかった。
「ま、まさかの処理落ちなのら? 水槽さんには引っ越してもらったのに、今度は花束さんが重いのら?」
画面の中で灯りが一度止まり、光る蝶まで空中で居眠りを始めた。机の上のスープはおいしそうなのに、湯気だけが途中で固まり、みるくは焼き芋を握ったまま首を傾ける。一テラも空きがあるのだから大丈夫だと思っていたが、去年の十月でサポートが終わったパソコンのことが、急に大きな岩のように見えてきた。
「何十万円も出して、またゲーミングパソコンを組み直すのら? 水冷なのに、冷やしているのに、どうして慌てているのら!」
みるくは花束を一つ持ち上げ、別の部屋へ運んでは戻り、十個減らしたところで駆け足を試した。今度は白い髪も赤いリボンも滑らかに揺れ、光る蝶がようやく羽ばたいた。原因は空き容量だけではなく、同じ場所に家具や光や花を集めすぎたせいかもしれないと考え、みるくは机の陰で冷めた焼き芋を一口かじった。
「パソコンを買うのは、まだ早いのら。五十四種類は捨てないで、季節ごとに十二束ずつ飾るのら。秋は秋桜、金木犀、竜胆、それから食欲の秋だから、お団子も追加なのら!」
翌朝、ポルテのグルめぐり机には栗ご飯、きのこのスープ、葡萄のタルトが並び、花束は壁際と別室へ分かれていた。水槽の跡には小さな鉢植えを置き、みるくが机の周りを一周すると、赤い裾は止まらずについてきた。買い替えの大冒険はいったん延期となり、みるくは温かいスープの匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。
「動いたのら! 地球もアストルティアも、今日は処理落ちしないのら。さあ、ポルテちゃんを呼んで、グルめぐり宴会を始めるのら!」