みるくの冒険日誌 Mサイズの家に入ったら廊下でした
みるくは黄色い三段フリルのドレスを揺らし、完成したフラワーショップへ入った。外から見れば大きなショーウィンドウが左右に広がり、二階までありそうな立派なMサイズの建物だったのに、中には細長い通路と蝶の仕切りがあるだけだった。白い天井の飾りは豪華だったが、五十四種類の花束を置いたら、自分が横向きで歩くしかない。
「何ですか、これ! Mサイズって書いてあったのに、めっちゃ狭い家キットじゃないですか!」
怒ったみるくは、蝶の仕切りを出口だと思って押した。ところが扉ではなかったため、額を黒い枠へぶつけ、小さな王冠が床へ転がる。頭上を飛んでいた白い妖精は、金色の光を散らしながら三度くるりと飛んだ。
「店長しゃん、外から大きく見える部分は、ほとんどショーウィンドウでしゅ」
「じゃあ、私は窓を買ったの?」
「はいでしゅ。とても立派な窓でしゅ」
「五万五千円のうち、いくらが窓なのよ!」
みるくは余計なことを叫んでから、持っていた青いじょうろを床へ置いた。現実の机には冷めた麦茶と半分残した栗まんじゅうがあり、九月の庭では赤い彼岸花が風に揺れている。栗まんじゅうを一口食べると少し落ち着いたが、口の中の皮が上顎に張りついた。
「妖精さん、栗まんじゅう食べる?」
「妖精は光の粉を食べましゅ」
「安上がりでいいわね」
「店長しゃんは、今月もう光の粉を三袋買ってましゅ」
みるくは聞こえなかったふりをして、花束を蝶の仕切りへ並べ始めた。ところが赤いバラを三十束置いたところで通路がふさがり、妖精さえ奥へ入れなくなる。みるくは「お客様は入口から眺めればいい」と言い張ったが、それでは花屋ではなく花の倉庫だった。
「もうロッキンマートにする!」
「お花屋さんはどうするでしゅ?」
「店の外で営業する。中は私の休憩所よ」
結局、ショーウィンドウには季節のコスモスと黄色いガーベラを飾り、残りの花束は庭へ並べた。狭い店内には小さな椅子と栗まんじゅうの皿を置き、妖精専用の光の粉も一瓶だけ残す。閉店後、蝶の仕切りの裏から見覚えのない銀色の鍵が見つかり、次の冒険では、狭すぎる店に隠された部屋を探すことになった。