みるくの冒険日誌 超空間のお花屋さん
みるくは白い石床の真ん中に座り、二段に並んだ花束を見上げた。淡い緑色の髪には宝石の髪飾りをつけ、黄緑色の大きな外套から紫色の靴だけを出している。白い百合、黄色い薔薇、赤いチューリップ、桃色のガーベラ、紫のラベンダーが朝日に輝き、甘い香りが青緑色の家の壁まで届いていた。
「お花屋さん、開店準備中です。まだ買ってはいけません」
通りかかったプクリポが、赤い花束へ手を伸ばした。みるくは立ち上がろうとして外套の裾を踏み、ぺたんと座り直した。昨夜食べたクリームパンの紙袋がポケットから落ちたので、慌ててお尻の下へ隠す。
「これ、いくら?」
「だから準備中です。看板を読んでください」
「看板、ないよ」
みるくは客が読まないのだと勘違いして、頬を膨らませた。ところが入口を振り返ると、看板は壁に立てかけたままで、表には「本日のおすすめ・焼き魚定食」と書いてある。宿屋からもらってきた古い看板だった。
「お花より焼き魚が欲しくなった」
「余計なことを言わないでください。私だってお昼前なんです」
花束を五十四個も並べたせいで、家の中へ入る場所がなくなっていた。みるくは白百合を寝室、薔薇を売り場、ラベンダーを台所にするつもりだったが、花束の隙間を通るたびに肩が引っ掛かる。しかも奥に置いた朝食の木苺ジャムパンを取ろうとして、黄色い薔薇を三つ倒してしまった。
「もう、超空間なのに狭すぎます!」
「置きすぎなんじゃない?」
「狭いのではありません。超空間をフレキシブルに使えていないだけです」
みるくは花束を壁際へ寄せ、中央に一本の道を作った。昼は売り場、閉店後は黄色い花束の台を動かして寝床にし、台所のラベンダーには洗った靴下を干さないと決めた。白いレースのカーテンの裏には小さな湯沸かし器と欠けた青いカップも隠した。
「店主というより、ここで暮らす人だね」
「今日から、みるくは住まい手です。お客様、最初の一本を選んでください」
プクリポは赤いチューリップを選び、代わりに木製の小さな看板を置いていった。みるくは看板の隅へ黄色い蝶を描き、また床へぺたんと座った。その看板にはまだ店名がなく、次の冒険まで、五十四個の花束と一緒に入口で客を待つことになった。