………………………………………あの日。
僕は、魔の波動を全力で酷使した。
スイの塔へ向かって、戦ったあの日。
僕は、眠っていたおぞましき力を、酷使した。
その日の帰り道。
夕闇はおろか、深い闇の街角を一人歩いて
帰っていた。
戦いは、確かに終わった。酷使し尽くした
魔の波動も、今は身体の奥底で静かに、静かに、
眠りについている……はずだった。
「うっ……!?」
突然だった。
微かに痛んでいた頭が、急激に痛みを強くする。
同時に、視界が赤く染まる。
まるで『こちら側につけ』とでも言うような。
悍ましいほどの脈動が、僕の中でかき混ざる。
「あ……ガハッ、アヴッ…………」
喉が熱い。頭が割れる。目が痛い。
膝が小鹿のように震え、街の片隅で、道の上に
無様にも倒れ込んでしまった。
冷や汗はナイアガラのように流れ、
視界はグニャリと焦点と共に無くなっていく。
おかしい。
何かが、内側から溢れようとしている。
いや……違う──────。
内側から、僕の肉体を「突き破ろう」としている。
痛みに暫く耐え抜く中、遂に
メキッ、と頭蓋の奥で、嫌な骨の軋む音が響いた。
「痛いッ……!痛い痛い痛い痛いッ!!
う、あ、あああああーーーッ!!!」
あまりの激痛に、僕はその小さな身体を丸め、
頭を強く抱え込んだ。本当に頭が割れる。
割れてしまう。
脳を直接、火の付いたチェーンソーで
斬り刻まれているかのような猛烈な熱と痛みが襲う。
『ピキピキ、ピキピキッ……』
頭皮のすぐ下で、何かが蠢き、その【何か】が
ハッキリと肥大化していく。
ぶちッ、と音を立てて、僕の漆黒の髪が裂ける。
内側から肉を割き、骨を突き破り、
禍々しく聳え立たんとする悪魔の角が、
天に向かって急速に生えていった。
激しい変異の拒絶反応に、指先の痙攣が止まらない。じっとりと流れるのは、ナイアガラの如し汗滝か、
それとも……頭を割いて溢れた血か。
けれど、痛みの極致の中で、
僕の意識は奇妙なほど冴え渡っていった。不思議だ。
「あは……は……」
口元が、自然と吊り上がる。
なぜだろう。この高揚感。
なんなのだろう、この全能感。
誰が止めてくれようか。
…………いや。止められない。止まる訳がない。
何が『呑まれるな』だ。
何が『ない方がいい』だ。
全てが、うるさく感じた。
身体中を駆け巡るこのおぞましくも
完璧な波動の昂りこそが、僕の求めた力なのだ。
そう、本能が言っている。
一際大きな心臓の鼓動と共に、不意に、
嵐のような魔の波動がピタッと収まった。
頭の芯まで溶かし尽くさんと暴れていた全能感が、
潮が引くように消えていく。
静寂が戻った街角から這い出て、大きな池に映る
自分の姿を……僕は、恐る恐る覗き込んだ。
いつも通りの小さな、愛らしいはずのプクリポの顔。けれどその漆黒の頭からは、
見たこともない血のように赤い角が、
傲然とそびえ立っている。
「……これは……僕……?」
狂気に包まれ、これが平然と化してしまった。
…………皆には何と言うべきか。
いや、言わぬが仏。僕は……
本当の悪魔に、なってしまうのかもしれないから。
(若干AIさんにお手伝いしてもらっています。が、
基本僕の手書きです。)