そして今夜も、止まったはずの時計が動き始める。
午後十一時四十八分。
遠くから、存在しないはずの列車の汽笛が聞こえた。暗闇に包まれたホームに、一筋の光が差し込む。
「……やっと、帰ってきたの?」
その声は喜びに震えていた。
だが、列車の扉が開いた瞬間、駅舎に響いたのは再会の歓声ではなかった。
それは、二十年もの間、誰にも届くことのなかった悲しみの叫びだった。
閉ざされた駅舎は、今も誰かの帰りを待っている。
そして、あの駅を訪れた者は必ず耳にするという。
最終列車が去ったあと、誰もいないホームから響く、悲痛な慟哭を。