アストルティアの花と風景を紹介する連載記事を書いています。ストーリーの進行に沿って、初めて出会う植物や風景について記載していきます。
今回からは、バージョン4の物語を開始します。

ナドラガンドにおける冒険の顛末を聞きたいと、老師ホーローからの呼び出しを受けた私は、指定された待ち合わせ場所にやって来ました。
グランゼドーラ城下町、入り口近くにある大花壇の一角。ベンチの常連さんに声をかけ、一時退いて貰うようにと指示があった通りにしましたが、正直人払いとは大袈裟な、と思ったものです。
しかしながら、やはり人払いはしてあってよかったのかもしれない、と、後になってからは思いました。
この後の出来事を目撃されていたら、騒ぎになっていたかもしれませんから。
私の兄弟のことに話題が及び、彼が遺していった不思議な箱を老師に見せた際、何気なく触れた筈のそれが突然起動したのです。
私は箱から生じた光に包まれ、その場から消えてしまったように見えたことでしょう。
兄弟はこの箱を使って、自在に空間転移を行っていました。…と老師に告げる間もありませんでしたから、老師が慌てふためいていたのも無理はありません。

不思議な光に包まれた後、その光はやがて私をどこかに運びました。
唐突に通常空間らしい場所に出たと思えば、そこは見知らぬ邸宅のよう。たいへん立派な設えですが、その意匠はこれまで見たことがないものでした。
…そして、邸宅の随所に飾られている、美しい花。
アストルティアでも、ナドラガンドでも見たことがない花たち。
どこか、全く未知の場所に来てしまったようだと。
花を見ながら実感した私でした。
忽然と現れた私を見た、この邸宅の主らしき人物…メレアーデと名乗った彼女は、おっとりとしたお嬢様然としていながらも、人の上に立つべく生まれついている、と感じさせる人物でした。
彼女の弟のクオードには不審者と見なされ、問答無用で拘束されてしまいましたが、程なく彼女によって私は自由を取り戻し、更にはクオードに取り上げられた件の箱を探して取り戻す手助けもしてくれました。
彼女が私を信用してくれなければどうなっていたことか。
箱を探して邸宅のあちこちを巡る際、彼女の部屋の入口を飾る花だけ、他と違っているのが何となく心に止まりました。
他の場所の花瓶には、花畑育ちらしい豪華な花の盛り合わせ。
でも、彼女の部屋だけ、上品ながらどこか野趣も感じさせる、白い花が一枝ずつ活けられていたのです。
彼女自身にとても似つかわしい。なぜか、私にそう思わせる花でした。
それにしても、一体ここはどこなのか。
私が何も知らないことに驚きながらも、メレアーデ嬢はこの邸宅はドミネウス邸、主のドミネウスは、エテーネ王国の王族であると教えてくれました。
エテーネ…王国?
初めて馴染みのある言葉に出会いましたが、同時に困惑もやって来ました。
何故なら私は、「最後のエテーネ」。
故郷であるエテーネ「村」は、私の目の前で滅んでいるのですから。
私の内心を知る由もないメレアーデ嬢は、飼い猫に促されるように一旦その場を離れていきました。

箱を取り戻したものの、これからどうしたものかと思案しながら、私は邸宅のテラスでメレアーデ嬢を待っていました。
テラスに出て判ったのは、ドミネウス邸が宙に浮かんでいること、同様の浮遊する建築物が他にも幾つかあることでした。
テラスの正面に見えるのは、おそらく王宮であろうことも。
私の知る「エテーネ」とは違うここが何なのか、思案していると再びメレアーデ嬢が現れました。
先ほどとは異なる装いに身を包んだ彼女は、何故か思い詰めたような顔をしながら私に記憶の赤結晶なる物を弟に渡すようにと告げました。
そして、理由を尋ねる間もなく私の手にある箱を起動させて私を転移させたのです。
曰く、私は「終末」を見なければならないからと。
…そうして再びの転移で送り込まれたその場所は、確かに世界が終わった後の世界のようでした。
草木一本すらも生き物の気配はなく、それでいて見覚えがありすぎる廃墟。グランゼドーラ城の残骸と、空を覆い尽くすような巨大で不気味な繭のようなもの。…総身が粟立つ思いをしながら、その場を退散してきましたが、そうできたのは例の箱…「エテーネルキューブ」に宿る自称「時の妖精」キュルルのおかげでした。
キュルルによれば、エテーネ王国が存在したのは、今から5000年前の世界。一方、あの終末の光景は、少し先の未来であるというのです。
滅びを回避しうる可能性に掛けて、私は再び5000年前のエテーネ王国に向かうことになりました。
次回は、バントリユ地方について記載予定です。