「ね、バーベキュー食べに行かない?」
果ての大地ゼニアスから帰還した私をエテーネの村で迎えたポルテは、赤髪の下の煌紅の瞳を輝かせながらそう言った。果ての世界で共に冒険した少女ポルテと女神ゼネシアの弟ラキは、最近このエテーネの村でアストルティアを学び始めたばかりだ。となれば、世界を旅して回ってきた私がついて行かない訳にはいかない。
なにより、宝石のような瞳の、可愛らしく背の低い、鈴の転がるような笑顔の、羽のように軽やかな声の、妖精のような明るい性格の、私の心を奪っていった可愛らしいポルテ嬢と共に行くのだ。彼女との逢い引き──デートに心躍らぬわけがない。私は二つ返事でOKした。
最近、新しいルーラストーンを貰った。リンクス氏の発明品を改造した、バシッ娘と同じように飛べる石である。オーグリードのガードラントまで、ものの数分で着けるであろう。私は紫の石を手に、バシッ娘秘伝の呪文を唱えた。
“ 信奉せよ 跳躍せよ 道程は規定されている”
『プラシー バーシー ル ル ル ン ポ ゥ』
程なくして、我々はガートラントの酒場へとたどり着いた。
アストルティアのバーベキューというのは素晴らしい。ギガントヒルズの霜降りミートを、溶岩のかけらとホカホカストーンでじっくり焼く。そうすると、肉の脂がゆっくり溶けて、中にじんわり火が通り、ジューシーな肉塊が出来上がる。肉塊に犬歯を突き立ててガブりと噛みつきぎゅうと引き絞れば、内側のやや赤い肉が弾力を持って牙を出迎え、噛み絞る歯とフォークを持った手に力を込めて引っ張れば、ブチリと切れて肉汁が溢れる。口に入れた肉片からはスパイスの香味と肉の豊かな旨みが溢れ出し、臼歯でぐいと噛み締め咀嚼すれば、幸せが口いっぱいを満たしてゆく。クズ肉や骨の近くのポロポロとした肉は、腸詰めにして燻製にする。カミハルムイの桜のチップとゴブル砂漠のホワイトウッドで燻製にすれば、塩味と木の香りが食欲をそそる最高のソーセージの出来上がりだ。燻製は葡萄酒…もとい、人間こどもでも飲めるように調整されたノンアルコールのぶどうエキスとも相性が良く、ブドウの香りが喉を満たせば、また肉を咀嚼する手が伸びる。発酵したミルクの香りとチップの香りが芳しく香るモッツァレーラのチーズの燻製などを出された日には、ブドウのおかわりを貰わねば気が済まない。
そうしてたらふく食った後だから、ルーラストーンで帰るなどということは出来なかった。何故かといえば、画面の向こうでは知られていないが、数秒でドラクロン山脈よりも高く飛翔し、高速で空を飛ばされたあと、急停止して急下降するこの移動法は、並大抵の乗り物よりも酷く酔うのだ。例えるなら、急上昇するエレベーターのなかでスクワットとでんぐり返しをするような…と言えば想像がつくだろうか。せっかく食べたバーベキューを、大空から大地と海に返す訳にはいかない(そんなことになれば、洗濯をするフワーネから怒られる)。かくして、私たちは歩いてエテーネの村に帰ることにした。
ガートラントから、大陸間鉄道に乗ってレンドアへ。かたんかたんと規則的な揺れと、程よく効かされた空調。そして何より満腹感で、私たちの意識はすぐにうたた寝の中に落ちていった。半睡半醒で見たポルテは、ぷにぷにのほっぺたとばら色の唇をもにょもにょとさせ、「もうたべられない…」などとお決まりの寝言を言っていた。あまりにも可愛い。控えめに言って妖精のような愛らしさだ。
レンドアからは、船と飛竜を乗り継いでエテーネの島へと渡る。個室の船と他に誰もいない大空は、彼女にとってとても珍しくワクワクとするものだったようだ。先程の天使の寝顔とはうってかわって、子供のように無邪気にはしゃぎ、ベッドでころころと転がったり、飛竜から海に向かって大声を出したりと、元気で爛漫な可愛さを見せてくれた。
もし、私に妹か娘がいたら、君のような子がいいな。
そんなことを呟いてしまったのは、飛竜が風を切る音に紛れて聞こえなかったと信じたい。
エテーネの村に帰りついたあと、ラキにお土産を渡したのだが、食レポはなんというか……オオカミ流だった。
可愛い彼女のお願いに、二つ返事以外の選択は無い。果ての大地の旅路から帰還した我々は、また新たなグル巡りという名の旅に出かけることになるのだった。
……というわけで、今回もキャラクター口調の日誌です。いやー、良いですよねグル巡り。ポルテ可愛い。新しいタイプのヒロインで、天真爛漫というか、天使はユーちゃんがいるからアレだけど妖精みたいに可愛いですよね…そこ、〇リコンとか言わない。そうだけど。
みんなもグル巡りやろう!可愛いよ!