冒険者の広場ではそのプレイヤーの現在地も閲覧することができる
そこには”グレン城下町 サーバー01”の文字。
私は急いでグレン城下町へ飛んだ。
そしてあの空間に足を踏み込むや否や、彼を視界にとらえた。
そして話しかける暇すら与えずに彼は消え去った。
私は絶望した。逃げてほしくなかった。
先ほどのチームメンバーはアカウントハックの可能性を挙げていたのだ。
だが彼は私が近づくとすぐに消えた。
そう、すぐに逃げたということはモニターの向こうで彼を操作しているのは
数日間話していた彼と同一人物であるということの紛れもない証拠だった。
私は彼に知られているこのキャラクターでグレンへ飛んだことを深く反省した。
まさか本当に彼本人だとは思わなかったのだ。うかつだった。
幸い彼の動向は冒険者の広場で手に取るように把握できた。
彼は私がその場から立ち去るのを待つかのように他の場所で待機し
数分後再びグレンに戻っていた。
すぐさま他のキャラクターでグレンへ飛び、彼を見つけた。
紛れもなく彼だ。彼はよく使うセリフとしぐさを巧みに使い
賭場を行きかうギャンブラーたちに愛想を振る舞いていた。
ちょっと笑った。
だが今、私は彼の知らないキャラクターを操作している。
彼に話しかけるのはとても容易かった。
彼にいいね!をすると、いらっしゃいませ!と元気な返事。
そして私は30万ゴールドをBETし彼との真剣勝負が始まったのだ。
ダイスをやったことがない人に軽く説明しておくが
ダイス賭博には何種類かあるのだが
彼が行っていたのは通称「Z(ゾロ)」といわれるもので
しぐさダイスを交互に使ってゆき表示される1~100までの数字から
先にゾロ目を出した方が勝ちというものである。
プレイヤーはディーラーに掛け金を取引で預ける。
30万ゴールドをディーラーに渡し、勝つことができれば再び取引にて60万ゴールドが支払われ、負けた場合は賭けた30万ゴールドはディーラーのものとなる。
つまりディーラーは一時的にプレイヤーの掛け金を預かる形となる。
私はダイスが行われる中、このキャラクターで彼の横へ居座った。
そう、まだ勝負がついていないこの段階で彼は消えることができない。
掛け金を預かったまま逃走することなど当然できるはずもなく私が横にいるのに彼は平然とダイスを振り続けた。もちろん彼と勝負しているのも私である。
そしてダイスが終わり、このキャラクターで一言
「おーすっかりダイスやってんなぁw」
すると彼はさっき逃げたくせによく言えるなwwwと思わせるように平然とこう言った。
「おお!ログくん!」
「やる?」
もちろんこのやる?とはダイスの事である。

その時の図である。
画面中央の赤と青真っ二つのドワーフが彼だ。
その左下のオーガが私の別のキャラクターで、右側がログである。
このプクリポの新民族衣装に青と赤で染色するこのドレアを
さっきメインでやろうとしていただけに本当に悔しさが込み上げてきた。
ーかぶった。
もう私はこれ以上の詮索をする気にはならなかった。
彼は彼だったのだ。
全て嘘だったのだ。
思い出に彼と一勝負をして、先ほどの勝ち分を持っていかれ
これであとくされもなく彼とお別れすることができるな。と安堵した直後
「ログくん、またきてね!」
「いくか!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」