ある冒険者の家に、一人の客人が訪ねてきた。
「ご主人は二階にいるかもしれません。探してみてください。」
プラコンにそう言われ、客は二階に足を運んだ。
階段を上がると、そこは気持ちのいい和洋室だった。
和室の奥のふすまを少し開けてみると、寝室につながっているようだった。
いきなり寝室に入るのも変かと思い、客はふすまを閉めると、反対側の廊下に目をやった。
明るい雰囲気の廊下には、いかにも冒険者の住まいらしく、歴代勇者の像や武器などが飾られている。
しかし廊下の角を曲がると、雰囲気が一変した。
せまい廊下に不釣り合いな石像。突き当たりに置かれた玉座。
魔王の居城風と言えなくもないが、そのショボさはどことなく、中二病をこじらせた子どもが、精いっぱい自分の居室を飾ったような、いじましさを感じさせた。
廊下の奥に扉があり、そこも寝室につながっていた。
寝室は狭いけど可愛らしい、ふつうの生活空間だった。
ほっとした客は、ふと続き部屋に目をやり、そして目を疑った。
そこには、主が趣味で集めたものの、飾る場所がなくて放置されているのであろうガラクタが、所狭しと並べられていた。
ガラクタ城。そんな言葉が客の頭をよぎった。
そして客は悟った。この家がガラクタ城にならないのは、プラコンたちの努力のおかげなのだと。
そして、そのプラコンたちの良識と圧力が、主の趣味をこの狭い空間に押し込めているのだと。
主はどうやら留守のようだった。
笑うべきなのか哀れむべきなのか、複雑な気持ちで客はその家を後にしたのだった。