気を取り直して、城下町北を巡る私達。
「あ、シュピ。ここちょっと寄らせて。」
ふと目に留まった古めかしい佇まいの武器屋に入る。
念のために武器は持ってきているが、長い事使い込んだせいか相当ぼろぼろの状態だ。
この後シュピを連れて城下町の外へ出るわけだし、何かあっては困るのでこの機会に新調しておく事にした。
武器鍛冶の技術と言えばオーグリードのグレンを真っ先に思い浮かべるが、ここも中々のものだ。
特に刀剣類。刃が繊細で美しく、それでいて頑丈。切れ味も申し分ないため、愛用する戦士はかなり多い。
私は陳列されている剣から、しっくり来るものを探した。
「ジュセの剣って、ほんとぼろぼろだったもんねー。」
肩越しに覗き込みながらシュピが言う。素人目にも酷い状態だったようだ。
「もらった時からずっと使ってたからね。」
「おー、だれにー?」
「お母さんに。」
シュピと出会う前、自堕落な生活を送っていた頃。私は突如、魔物討伐をやりたいと言い出した。
深い考えは無かった。単に、そこそこ多額のお金を貰えるから。小遣い稼ぎのつもりだった。
それでも命の危険はあるし、最初は猛反対されるかと思ったが、お母さんは何も言わずに、鉄の剣を与えてくれた。
手に取ったときに感じた重みは、今でもはっきりと思い出す事が出来る。
行動に伴う責任の重み、生きる事の重み、命の重み…。
お母さんは、剣を通じて気づいて欲しかったのだろう。浅はかだと。絶対に出来っこないと。
私は、どこか突き放された気がして悔しくて、がむしゃらに剣を振るってきた。
最初は苛立ちをぶつける感じだったが、段々と気分も落ち着いてきて、気がつけば生業となっていた。
「それだけ使ってくれれば、お母さんも幸せだよねー。」
「…そうだね。だから新しいの買っても許してくれるかな、って。」
今の生き方は正しいのか?と聞かれて、正しい と答える自信はまだ無い。
だが今は昔と違って、守りたい人が居る。守りたい生活がある。
昔よりはマシだ。となら、胸を張って言う事が出来るだろう。
「よし、これにしよう。」
私ははがねの剣を手に取り、カウンターへ持っていって清算する。
早速、手に入れたばかりのはがねの剣を抜いて見せる。
「わー、かっこいいー。」
拍手をして賞賛してくれるシュピ。
「試しぎりしよー!そうだ、これでっ。」
箱の中から残っている桜苺娘を取り出すシュピ。
「ちょっと、包丁じゃないんだから。」