ピクニックから帰ってきた後、私達は再び南大通りでショッピングを楽しんだ。
「ねー。ジュセー。もしかしてもしかするとー…。今日、お城に泊まる感じー?」
「…そういう事になるかな。」
内緒にしていた今日の宿泊地を明かしてから、シュピは浮かれっぱなしだ。
やはり普通の女の子。お城での生活というものに、潜在的に興味を抱かずにはいられないのだろう。
「…おっと、もう夕方じゃない。シュピ、そろそろお城へ行くよ!」
日が傾いていたのに気づき、私達は急ぎ足で城へと向かった。
カミハルムイ城。
他の国のお城のような派手さは無いが、落ち着いた雰囲気で広い敷地にずっしりと構える様は、威厳たっぷりで見る者を圧倒する。
「この先は民間人の立ち入りは禁止です。お引き取りを。」
門番2人が私達の通行を遮る。このラフな格好では怪しまれるのも無理はないか。
「みんかん人じゃありませーん。シュピ王妃ちゃん様でーす。」
「…は?」
「こら!」
ふざけるシュピにツッコミを入れ、門番に謝って通行証を見せる。
「…なるほど、あなた方が。失礼しました。こちらへどうぞ。」
私達は門番に連れられ、城の入り口へとやってきた。そこで城内の案内人と交代する。
「ようこそ、ジュセ様にシュピ様。博士より話は伺っています。早速ですが、博士のお部屋へご案内致しますね。」
案内人の後について廊下を歩いていく。
カミハルムイ城の構造は、今朝見た武家屋敷と似ている。大きな中庭を囲むように、廊下と部屋が配置されている。
だが、さすが城だけあって規模が比べものにならない。
特に中庭だ。いや、ここは庭と呼んでもいいものだろうか。
色とりどりの花が咲き乱れ、楽しげに舞う蝶。小鳥のさえずりと水のせせらぎのハーモニー。散歩をする、綺麗な服を着た王族の人達。
そして中央に立つ、ひときわ大きな桜。
ここはまるで、桜を中心に形成された一つの世界であるかのようだった。
「こちらが博士のお部屋です。」
見とれているうちに、博士の部屋の前に到着していた。案内人はノックをし、
「博士、ジュセ様とシュピ様がお見えになりました。失礼しますね。」
と言うと、はーい と、中から若い女性の声が聞こえてきた。
それを確認するとドアを開け、博士の部屋に私達を招き入れた。
「やっほ、私がハネツキよ。遠い所からご苦労様。」
そう言って手を差し出してきたハネツキ博士は、私のイメージする博士像とは大きくかけ離れた人物だった。
身なりこそ研究者といった感じだが、まだ若いエルフの女性だ。何より行動や言動がかなりフランクなのに驚いた。
「よ、よろしくお願いします。」
少し調子が狂うも、挨拶と握手を済ませる。
「それと…。あなたがシュピさんね。よろしく。」
「よろしくねー。おばさんー。」
博士の眉がぴくっと動いた気がしたが、無事にシュピとも握手を済ませる。
「…さて、どうしようかなぁ。とりあえず立ち話もなんだし、あっちへ座りましょうか。お茶でもいれるわ。」
「わーい、お菓子もよろしくねー!」
シュピの頭を押さえ、お構いなくと言って私達は座布団に腰かけた。