まずい事になった。
旅行から帰還後、初の仕事を順調にこなせたまでは良かった。
仕事の後、私はハネツキ博士にお礼の手紙を送るため郵便局に立ち寄った。
すると郵便局員から、私宛てに手紙が来ていることを告げられた。
誰だろう 手紙を受け取ると、差出人の名前を確認した。
―お母さんだった。
私は凍りついた。
恐る恐る、封を切って手紙を読んでみる。
―ジュセへ。
もう、言いたいことがありすぎて、何て言ったらいいか分かりません。
あんたがジュレットへ仕事に行くと言って家を飛び出して丸1年…。
ろくに連絡も寄越さず、一体何をしてたの!
お父さんもお母さんも、あんたが死んじゃったんじゃないかって思ってたのよ!
居場所を突き止めるのにどれだけ大変だったか…。
とにかく!積もる話は直接会ってからたっぷりします!
7月の27日。あんたの家に行くから。
「…お客さん?大丈夫です?顔色悪いですけど。」
郵便局員が心配して声を掛けてくる。
「あ…はい…大丈夫です…。」
私は震え声で返事をすると、ふらふらと郵便局を出た。
手紙の文章を見る限り、お母さんはシュピ絡みの事は知らないらしい。
となるとあの富豪の屋敷ではなく、レンドアの討伐隊本部にでも問い合わせて、私の所在を割り出したのだろう。
討伐隊のデータベースは凄まじいものがあり、誰がどこでどの魔物を倒したのかが事細かく記録されている。
もちろんそう簡単に開示はしないだろうが、失踪者の捜索が絡んでいるとなると話は別だ。
とにかく、今から逃げても間に合わない。旅行中に手紙がきていたため受け取りが遅れ、対策を練る時間が無くなってしまった。
正面から、迎え撃つしかない。
「おかえりー!」
家に帰ると、シュピが明るい声で出迎えてくれた。
「…ただいま。ん、それどうしたの?」
シュピの額に貼ってある絆創膏を指さす。
「えへへー、ちょっと転んじゃってー。」
「大丈夫?危なっかしいなぁ、気をつけてね。」
患部に手を当てて、注意を促す。
「わかったー。でも、ジュセもなんか元気ないねー。」
声のトーンから感情を読み取られたのだろうか。やはりシュピに隠し事は出来ない。
尤も、いずれ分かる事だし言うつもりではあったのだが。
「…うん。まぁ、後で説明するよ。」
私は手を洗って、テーブルの席についた。
夕食のオムライスを食べながら、お母さんの襲来について話す。
「へー、ジュセのお母さんがー!」
わくわくするシュピとは対照的に、私は不安で潰されそうだ。
「明日には来ると思う。…お願いシュピ。あんまり余計なこと言わないで、私に合わせて…。」
「うん、わかったー!コンシェルジュのしゅひ義務、ってやつだねー!」
自信ありげに胸をどんと叩くシュピ。
「げほっ、げほっ…。」
「…期待してるよ…。」
私は大きなため息をついた。