今日は仕事は休み。私はアズランの町へ買い出しに出かけた。
この一週間、私は早起きして朝食と自分のお弁当を作っていた。
苦手だったものでも、ある程度トレーニングすればそこそこ出来るようになってくるものだ。
初めは黒焦げだった目玉焼きも、十分食べられるレベルにはなった。
その他にもご飯炊きや、野菜炒め・スープなど、料理本の難易度★1の料理なら(味はともかく)作れるようになっていた。
仕方なく始めた料理だが、今では新しいレシピを覚えるのが楽しい。
そして何より、私の料理を食べてシュピが喜んでくれるのが嬉しい。
「ふふっ、そういやシュピも同じ事言ってたっけ…。」
少し笑って、私は食材を買い物かごに入れていった。
「おう、ジュセ。」
店を出ようとしたとき、討伐隊員のマダラキさんと鉢合わせした。
そういえば昨日、仕事上がりに「明日は休日だ」と聞いた気がする。
「こんにちは。マダラキさんも買い物ですか?」
「ああ。丁度終わったとこだ。」
マダラキさんは買い物かごを、片手でひょいと上げて見せた。
「…なぁ、アンタこの後暇か?俺ん家、この近くなんだよ。良かったら少し茶でもどうだ?」
「え?えぇ…。後は帰るだけですが…。でも…。」
今までこういった機会に遭遇した事が無かったので、返答に戸惑う。
「じゃあ決まりだな、行こうぜ。あ、ちなみに安心しな。俺はエルフのねーちゃんにしか興味ねーから。」
「そ、そうですか。」
安心したような期待外れのような、複雑な気分になった。
私はマダラキさんに連れられ、商店街のはずれまでやって来た。
「あれ、ここって…。」
「ん、知ってんのか?」
その時、ドアがガラガラと音をたてて横に開き、中からひょこっと老婆が出てきた。
「いらっしゃい。…なんだいお前か。」
「ただいま、母ちゃん。なんだいは無ぇだろ。お使い行ってきてやったのによ。」
「ふん、寝床用意して飯まで食わしてやってんだから、そんくらい当たり前だよ。…ん、お前さんは。」
ふと、老婆が私を見る。
「こ、こんにちは。この間はどうも。」
「んだよ、ジュセ。母ちゃんと知り合いだったのか?」
私は先日、この書店を訪れたことをマダラキさんに話した。
「そういう事か。この偏屈婆さんの店に来ちまうとは、アンタもついてなかったな。」
「いえ、おかげで素晴らしい本と出会う事が出来ました。ありがとうございました。」
私はマダラキさんのお母さんに向かって頭を下げた。
「ゴールドの分だけ働いただけだよ。」
お母さんは表情を変えず、淡々と言った。
「…ふーん、そりゃ良かったな。まあいいや、入れよ。」
マダラキさんは少し面白くない顔をして、私を居間へと上げた。