Phase 15『さよなら。私のちいさなゆうしゃさん(前編)』
その子。
「ヒロくん」と出会ったのは、今から10年前の新年が明けた夜のことでした。
いつものように私は、サーバ1のグレン城下町の駅前で何をするというわけでもなく、ひとり喧騒の中に身を置いて、途切れることなく流れ続ける見知らぬ人たちの声をぼんやりと聴いていました。
「だれか、てつだって!」
するとどこからか、レベル上げやコインボスの持ち寄り募集などの呼び声に混じって、助けを求める声が聴こえました。
私は、その声の主を見逃さないように耳をそばだてながら、聴こえてくる方角に向かって人混みの中を辿ってゆきました。
グレン城へと続く階段の途中に、その小さな声の主はいました。
「おねえちゃん、ありがとう!」
やっと仲間になってくれた大人の私に、錬金もなにもない駆け出しの戦士の装備を纏ったキッズの男の子が元気にお礼を言ってくれました。
それが、「ヒロくん」でした。
なんのボスかは忘れましたが、二人でいっしょにそのボスを倒したあとに、私たちは「フレンド」になったのです。

それからしばらくが経って。
「だいまおうを、たおしたい」
ヒロくんが言いました。
私は時期早々だと思いましたが、どうしてもと言う彼の強い願いを受け入れて、二人でバージョン2のラスボスに挑みました。
果たして、サポートのNPCもまだ弱く、ヒロくん自身のレベルも装備も貧弱だったせいもあって、あと一歩のところで、私たちは何度も何度も全滅してしまいました。
両親から貰ったなけなしのお小遣いを使って、限られた時間で遊んでいる小さな子供なら、それも仕方のないことでした。
けれどもヒロくんは、「自分は弱くてみんなに手伝ってもらってばかりで迷惑がかかるから」と、責任を感じてDQXを辞めてしまったのです。
私もまたしばらくの間ゲームから遠ざかっていましたが、それから二ヶ月ほどが経ったある日、ヒロくんがまたアストルティアに戻ってきたことを彼からの手紙で知りました。
復帰したあと、十分なレベルと経験を積んだヒロくんは、だれにも頼らずに自分一人の力で大魔王に打ち勝っていたのです。
「ぼく、つよくなったよ!」
そう誇らしげに話す小さな戦士に、大人の私が教えることは、もうなにもありませんでした。

「おねえちゃん。ぼく、こんどのかきんが切れたら、ドラクエやめるよ」
それから半年が過ぎたある日。
ヒロくんが唐突に言いました。
シナリオボスが強すぎて、遊ぶ時間も限られているキッズの子たちには、それを倒すための装備も高すぎて買えず(当時はシナリオボスのレベルを選ぶことができず、錬金付きの装備はバザーで買う&だれかに付けてもらうしか手段がありませんでした)、大人たちに混じって遊びことができなくなってしまったのです。
そんなヒロくんは、グレン城下町で募った見知らぬ大人たちに自分が手に入れたカードやコインを無償で差し出し、かつての自分のように困っているキッズの子を旅先で見つけたら、見返りも求めずに助けてあげていたのです。
私は、そんなヒロくんが決めたことだからと、最後は笑って彼を見届けることにしました。
「さいごにみんなともいっしょにあそべたし、おねえちゃんにも会えたから。さいごは、だいすきなおねえちゃんの家で終わるよ」

「おねえちゃん、元気でね! バイバイ!」
そう言い残してヒロくんは、私のフレンドリストから消えました。
勇者はだれかが困っているときに現れて
その人を救ったあとに
だれにも知られずに
人波の中に消えてゆく
でも私は知っている
あなたが本当の勇者だったことを
さようなら、私のちいさな「ゆうしゃ」さん。
『あなたに会えてよかった ありがとう またね^ ^』
(ヒロくんが私の家に残してくれたメッセージより)

この記事の作成にあたり、同じチームメイトで最近DQXに復帰した「しろすけ」さんに、写真モデルになっていただきました♪
当時の「ヒロくん」とそっくりそのままの姿で、ちょっと泣きそうになってしまいましたよ笑
友情出演
メイン「ウィルカ」のチームリーダー「アオリ~カ」さん(2枚目の写真サポート仲間として)
いやあ映画…いや、ドラゴンクエスト、そしてチームって、本当にすばらしいですね!
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