
とある教会跡。
淡く光を帯びた女神像の前に、一人の青年が膝をついていた。
女神像が、静かに語りかける。
『――我が愛しき子よ。
胸に抱えているものを、ゆっくり話してごらんなさい。』
『その霧を、晴らして見せましょう。』
「おお、女神さま……。
ありがとうございます。」
「僕…どうしても、気になることがあるんです。」
『言ってごらんなさい。』
「わんこそばって、妙に語感が挨拶っぽいと思いませんか?」
おはよう!
こんにちは!
こんばんは!
わんこそば!
「――ほらね?」
「でも、果たしてそれを言うべきは
朝なのか、昼なのか、夜なのか……私は一体いつ
わんこそば!と挨拶すれば良いのでしょう?」
「神よ、どうか迷える私をお導きください。」
『…………。』
ひとつまみの沈黙の末、女神さまは口を開く。

『『 こんばんわんこそば 』』
青天の霹靂だった。
それは、世界で唯一私の憂いを
晴らせたかもしれない言葉だった。
「おお、女神さま……。
尊きお言葉、感謝いたします。」
「実はもう一つ、気になっていることがあります。」
『……聞きましょう。』
「わんこそば はあるのに、
なぜ にゃんこそば はないのでしょうか?」
「私はどちらかと言うと犬派寄りの人間ですが
それでも、あまりにも猫ちゃんが可哀想で……。」
「神よ、どうか私と猫ちゃんをお救いください。」
『…………。』
小さじ一杯の沈黙の末、女神さまは口を開く。

『『 やっぱほら、猫は液体ってよく言うじゃん?
だからどうしても
麺の主役にはなれないんじゃない? 』』
青天の霹靂だった。