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元騎士

ザラターン

[ザラターン]

キャラID
: ER367-139
種 族
: オーガ
性 別
: 男
職 業
: バトルマスター
レベル
: 133

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ザラターンの冒険日誌

2024-11-23 22:27:56.0 2024-11-24 01:21:06.0テーマ:その他

砂の記憶(10・了)(ver7.0までのネタバレ注意)

( 今、誰と…話してたんだっけ…?


たった今、自分が していた事が思い出せない。

ど忘れ?ボケたか、おれの頭?
いや そんなハズは…


( 落ち着け、順を追って思い出せ…!
  おれは今日、この街に着いて…
  荷運びを終えた後、道に迷って、それから…


メレアーデ王女の演説が終わって
次第に閑散としてゆく人混みの中、
話していた筈の相手を探して 辺りを見回しながら
混乱する頭を必死に整理していると…


『 あー!やっぱり ここに居た!

『 ふん、どうせ迷子にでも 
  なってたんだろ。


ふと、聞き慣れた声が響いてきた。


☆   ☆   ☆ ☆   ☆   ☆


声のした方を見れば、
腕を組んで鼻を鳴らすツキモリと、
手を大きく振りながら歩いてくる
エスタータの姿があった。


『 お、おう…ツキモリ、エスタータ。


『 『おう』じゃないってのっ!

  なっかなか宿に来ないからさー、
  ザラさんコレ 迷子になってるんじゃネ、て
  話してたんだよ!
  
  で、前に『王女の演説見に行くー』て
  言ってたから、広場に行けば合流できるかもー、  って来てみたら、案の定!

『 で、どうなんだ?
  迷子だったんだろ、やっぱ。
  ゼクレスの樹海じゃねんだぞ情けねえ。


仲間達の鋭い推理に図星を刺され、
ちくちくりと胸が痛む。
おれは苦笑いで頭を掻いた。


『 いやあ、すまん。

  迷子…だったのは
  まあ、その通り、なんだが…その…
  なんか…何かが、おかしいんだ…

『 あん?何を言って…
『 あれ?ザラさん
  手に持ってんの何、それ!


今のおれの状況を
どう説明して良いか考えあぐね、
口ごもっている間に、
吟遊詩人が、おれの手の中にあった
砂時計の存在を、目ざとく見つけ出したようだ。


☆   ☆   ☆ ☆   ☆   ☆


『 わ!砂時計じゃん!
  広場にあった でっかーいやつ!
  あれのミニチュア版だよね!?

  どこで買ったのコレ!


『 コレは…貰ったんだ…
  (いつ?誰に??)
  いや、貰った…?
  (ん…だ…っけ?)


砂時計を見つめた瞬間。

記憶の混乱は、ますます白濁を極め…
おれは凄まじい不快感に襲われた。


それは、例えるなら…

心と頭にポッカリと空いた穴に、
急に得体の知れない『何か』が
凄い勢いで流れ込んで来て…

その穴を瞬く間に埋め尽くしてゆくような。
そんな感覚。


( や、やべえ…!
  この感覚に身を任せたら…!
  
  おれは…何か…!
  大事なものを…
  失ってしまう、気がする…!


…不快感に耐えかね、
吐き気を催して、思わず口を押さえる。

だが…

その不快感は、ものの数秒も続かなかった。



☆   ☆   ☆ ☆   ☆   ☆


『 えっ、ザラ…さん…?


おれの様子が おかしいと察して、
心配そうに覗き込む仲間達に、
おれは、ケロっとした顔で向き直った。


『 ああ悪い。
  なんか、急に気分が悪くなって…
  でも すぐ治った。大丈夫だ。


実際、あの不快感は嘘のように消えていた。
一体何だったのだろう。


『 おいおい、しっかりしろよ。

『 旅の疲れが出たのかな?

『 いや大丈夫だって。
  で、何だっけ?ああ、コレか。


…手に持った砂時計を、何気なく見る。


『 こいつはな、貰ったんだよ。
  式典開催の記念品だ、って。
  なんか…スタッフっぽい人から。

『 えー!いいな!
  まだ貰えるかな!?

『 どうかな。
  数量限定で配布って言ってたからなあ。
  あの人混みだ。
  もう残って無いんじゃないか?

『 きいー!あたしは諦めない!
  いてくるッ!

『 おいやめろ馬鹿!
  迷子が増える!
『 ぐえっ!?


慌てて駆け出そうとするエスタータのスカーフを、
ツキモリが手綱のごとく引っ張る。

そんな いつもの光景に目を細めながら、
おれはもう一度、砂時計を眺めた。

只の記念品だし、別に吟遊詩人に 
あげてしまって構わない、と
思ったからだが…

でも流れ落ちる砂を見つめていると。

理由は分からないが、なんとなーく。
自分で持っていた方が良いのかも、と、
思い直したのだった。


☆   ☆   ☆


かくして。
【 エテーネ王国お披露目式典 】は
閉会の運びとなった。

だが、実はこの日。この街から…
幾つかの人や物が、ひっそりと。
人知れず【消えていた】。

この街に降り掛かった この静かな厄災が、
【 創失の呪い 】と呼ばれる代物だった事を
おれが知るのは、もう少し先の事になる。


~砂の記憶、了~
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