『 ふふー…!
ウェナと言えばやっぱ、
新鮮なフルーツとお魚でしょ!
特にこの『とこなつココナッツ』は、
果肉もジュースも美味しいって
他の大陸でも評判なんだから!
潮騒香る、オープンテラスのレストラン。
テーブルの上のフルーツの盛り合わせの中から、
ストローの刺さったココナッツを手に取り、
吟遊詩人は得意げに語る。
…グレンを発ち、再び鉄道の人となったおれ達が
次に目指したのは、オーグリード大陸の
南に位置する、ウェナ諸島はジュレットの街だった。
アズランやグレンと同じく、我々冒険者には
馴染み深い街の一つだが…どうやらここは、
エスタータの故郷でもあるらしい。
『 あとはー…
☆ ☆ ☆

☆ ☆ ☆
『 みんなに食べてほしいのは、
やっぱりジュレッ子の味!
シンプルなアクアパッツァが良いかな、
と思って!
フルーツに続いて運ばれて来た大皿には、
スープに浸した巨大な白身魚が一尾、
豪快に盛り付けられていて…
かと思えば、その周りは、色とりどりの殻付きの貝や小さなトマト、エビ…
散りばめられた香草類の葉などで
綺麗に彩られていて、実に食欲をそそられた。
『 改めて見てみるとやっぱ、
ウェナ料理ってお洒落だよな。
飯一つ取っても、つくづく
『お国柄』ってやつは出るモンなんだな。
『 ふん、問題は見た目よりも味だぜ。
大体、こんな軟派な料理が
サバの味噌煮を超えられるワケがー…
『 ままま、いいから!
おれが感嘆している横でぶつくさ言うツキモリの
口に、エスタータの手でスープと魚の身の乗った匙が素早く突っ込まれる。
『 もがっ…!
そしてー…次の瞬間、
魔族はカッと目を見開いて吟遊詩人を見るなり、
震える声で呟いたのだった。
『 お前コレ…天才か…?
『 でっしょー♪
すごいんだよコレ。
ブイヨンとか何も使ってないんだから!
魚介の旨みとかさ、塩水とかが凝縮して
こんな味わい深くなるんだよ。
珍しく褒め言葉を放ったツキモリに続いて
料理を口に運んだ、おれを含む仲間達からも
絶賛の声が上がる。
それを受けて上機嫌になった吟遊詩人は、
突然、竪琴を爪弾き出し、謡い始めた。
“ おお…アクアパッツァ…
猫も跨ぐ売れ残りの魚でさえも
ウェナの潮騒とジュレッ子魂が
とびきりのご馳走に変えたもう…♪ “
『 いいぞ嬢ちゃんー!
『 よっ!ジュレッ子期待の星ッ!
『 あ、ありがとうーっ!?
…それを聴いていた地元の客達から
ノリの良い喝采が送られてきて、
エスタータは照れ顔で頭を掻くのだった。
『 えっへへ…♪
実はさ、今日のメニュー、
レーンの村で潮干狩りできる
やたらメタリックな貝のチャウダーとか、
ちょーっと贅沢して
ヴェリナードのエレガントなコース料理とか、
色々迷ってたんだけど…
やっぱり故郷の味でみんなに喜んで貰えたら
嬉しいもんだね!
『 故郷の…味、か…
エスタータを中心に場が盛り上がる中、
匙を咥えたまま、ふとツキモリが何かを呟いたような気がしたのだがー…
『 Fuーーー☆
マジラブ!ゲキマブ!
ふるさとのテイスト!!
それを確かめる前に、我が思考は
何者かのハイテンションなシャウトに
遮られたのだった。
☆ ☆ ☆

☆ ☆ ☆
『 バイブス アガってキターーッ!!
( なんだ…『パイセン』か。
☆ ☆ ☆

☆ ☆ ☆
『 おい…なんだコイツ。
『 何って、パイセンだけど。
『 『それ』が何かって聞いてんだよ。
ツキモリが、先程から一転、白けた顔で、
おれ達の間に割って入ってきた
『パイセン』…妙ちきりんなロボット…を指差す。
『 パイセンはね、遊び人のロボットだよ。
『 なんか…盛り上がってる現場とかに、
誰も知らないうちに
たまーに紛れ込んでんだよ。
『 んだ、そりゃ…
もはや妖怪の類じゃねぇか。
エスタータとおれの紹介に、
全く要領を得ない感じで、
魔族はパイセンを見定める。
目が合ったパイセンは、臆する事なく
ツキモリに手…内蔵アーム…を差し出した。
『 yeah!ツノツノBOY!
シャルウィーダンス?
その声が聞こえたのか、聞こえてないのか…
ツキモリはロボットの問いに応えること無く
彼から視線を静かに外し、
遠い目でウェナの海を見つめるのだった。
『 ノォーッ!
ヒトミィィ!そらさないでェェッ!!
☆ ☆ ☆

☆ ☆ ☆
『 むむ…!
~つづく~