『 見えてきたようだぜ、目的地。
我が言葉に、残り僅かな米を使った献立を
考えていたツキモリが、軽く舌打ちしながら、
手に持つ皮袋を、まるで『お守り』を
身に付けるかのように、大事そうに
しっかりと腰に括りつけ直す。
『 こっからは気を引き締めて行かないとな。
『 ふん、言われるまでもねェ…
☆ ☆ ☆

☆ ☆ ☆
目的地ー…
魔界南部に広がるこの砂漠には、
数千年の昔に栄えたという『海運都市ザード』や、
更にそれ以前に隆盛を誇ったであろう国々の遺跡が、遺構となって、今でも点在している。
その中には、長い年月のうちに自然洞窟と一体化し、半ば迷宮と化したような場所も、
幾つか存在しているらしい。
おれ達が辿り着いたのも、
そういう場所の一つである。
仲間達と頷き合い、
岩肌にぽっかりと口を開けている洞窟に、
慎重に足を踏み入れてゆく。
☆ ☆ ☆

☆ ☆ ☆
『 にっひひ~♪
洞窟探検、遺跡探索…!
冒険者の血が騒ぐってもんよ♪
『 おいおい、
今回は遺跡荒らしに来たんじゃないだろ。
今にも竪琴を爪弾かんばかりの
吟遊詩人を軽く たしなめながら、
体が紫色に発光している、奇妙なコウモリを
光源代わりに、仄暗い洞窟をゆく。
『 わぁ~かってるけどさ…
『 ふん…どっちにしろ、
めぼしいお宝なんて発掘済みだろうよ。
『枯れた遺跡』ってヤツだ。
『 夢がないなー、ツキモリは。
もしかしたらまだ何があるかもじゃん!
ほらほら、二重底の宝箱とかに~、
なんびゃくカラットのー…!
『 そんな夢物語を謳いながら
『ひとくいばこ』に頭っから齧られて
脳漿ぶちまけたバカが今まで何人いたか…
『 ひい怖ッ!
鼻を鳴らすツキモリの言葉を真に受けた
エスタータとクーが、
青ざめた顔で身震いした。
いやはや、それにしても緊張感がない。
おれはため息混じりに呆れ声を上げた。
『 お前ら声がデカい…
遠足じゃあ無いんだぜ。
一応、『潜入任務』だ。
おれ達がここに来たのはー…
そこまで語って、
おれは改まってキリっと男前の顔を作りー…
そして、出来る限りの良い声で囁いた。
ついでにサムズアップ!
『 『正義の為』、なんだからな…!
『『『 ……… 』』』
……賑やかだった道中が、
一瞬にして静寂に包まれた。
耐え切れなくなってきて、
おれは出てきた鼻水と入れ替わりに
サムズアップを引っ込めるのだった。
『 …ご、ごめ…
歯ァ浮いたわ…自分でも…
『 ダヨネ。
…しかしこの言葉。
丸きり嘘ってワケでも無かったりする。
☆ ☆

☆ ☆ ☆
“ 戦争に?
ゼクレスとバルディスタが!? “
“ うむ、そうなのだ。
魔界にはすでに、
暗雲が立ち込め始めている… “
あの日、男爵は語った。
つい先日、ゼクレスからバルディスタに
戦線布告があったらしいのだ、と。
( 大魔王の名の下に、魔界は一つに
なろうとしてるんじゃなかったのか…?
…それに…大魔王云々を抜きにしても
どうも解せない。
今バルディスタを相手取って、
ゼクレスに一体、何の利がある?
真っ向からぶつかって勝算は薄そうに見えるし、
それ以前に。
国内外の…今や、魔界でも最大勢力であろう、
『親大魔王派』を敵に回して、
最悪、世界中から孤立する恐れすらある。
そんなリスクを負ってまで
戦争を起こそうという理由とはー…?
“ そう、解せないのだよ。
それがどうにも不気味でね… “
男爵の言葉に、吟遊詩人がポンと手を叩いた。
“ 王様がさ、魔物に操られてるとか?
英雄譚に結構あるよ、そーいうの。 “
“ ふむゥン、成る程。
有り得ない話では無いね。“
確かに魔物ならば、例え正当な理由など無くとも
愉快犯で事件を起こして不思議は無いかもだがー…
しかし、憶測だけで事を進めても仕方ない。
そして男爵が語るには。それとはまた別に、
一部、この戦争話を煽って暴利を上げようという
輩も蠢き始めているらしい。
ファラザードがその取り締まりと、
戦争阻止に向けて動き出してはいるようなのだが…
事が事だけに、国として大々的に動けば
下手に他国を刺激してしまう可能性があり…
水面下からでしか、対策を講じられていないのが
現状らしい。
“ 故に、ナジーン殿下を通じ、
私の元にも協力要請が入った所だったのだ。
そしてー…そんな折。
偶然君達がやってきた。
そう、国というものに縛られる由縁の無い
…君達がね。“
~つづく~