『 いたぞ逃すな!侵入者だーッ!
ジャリムバハの洞窟から繋がる とある遺構。
その内部に、緊迫した怒声と
けたたましい足音が響きわたる。
その騒音から遠ざかるように、
慌ただしく遺構内を走り回る影が、四つ。
というかー…
『 もー!ザラさんのバカ!
そっこー見つかってんじゃんーッ!
『 鬼!お前はガサツ過ぎんだよッ!
『 うっはっはw
すまん、走れ!逃げるぞーッ!
『 うわわわっ…!
…恥ずかしながら。
その影は、ぶっちゃけ おれ達である。
慌てふためくクーを はぐれないよう先導し、
吟遊詩人と魔族から罵声を浴びながら、ちょっとした迷路のような この遺構内をひたすら走る。
半ば開き直って、
おれはこの状況を笑い飛ばしていた。
( やれやれ、男爵に乗せられて
つい引き受けてしまったもののー…
おれは昔っから、ステルスアクションってヤツが どうにも苦手なんだ。
たとえば…旧友の魔法戦士や、
知り合いの器用そうな海賊とかならば、
こんな密偵めいた潜入任務も
お手のものだったりするのだろうか。
軽い劣等感と共に、そんなことを、ふと思う。
二人とも今頃はどこで、何をしているのやら。
『 いや、オーガの図体と騎士の装備では、
元々隠れるのとか向いてないんだって!
うん、そうそう仕方ない仕方ない!
女々しくも そう己に言い訳しながら、
四方から襲いくる、古代からの遺構の番人らしき
ガチャコッコやひとくいサーベル等を蹴散らして
ひた走る。む、前方に武装した魔族の男!
『 ええい、南無三ッ!
急に鉢合わせたこちらに 驚き戸惑っている内に、
殴り飛ばして一撃で気絶させる。
うむ、今のは騒がれる前にやったから
隠密成功だよね!
『 …もう、正面から制圧した方が早くねェか?
ドヤ顔のおれを座った目で見ながら、
ツキモリが そう呟いた。
☆
デッドリー男爵から請われた今回の仕事…
それは、簡単に言えば、
『戦争を煽って食い物にしようとする連中』を
ファラザードと連携して洗い出し、
取り締まる任務…その手伝いだった。
繊細な仕事は苦手なのだがー…しかし。
男爵や、ファラザードのユシュカ王、
副官のナジーン殿には大きな借りもある。
( でも、今はクーの
記憶探しの旅の最中でもあるしー…
…男爵への返答に悩んでいたおれを、
結局クー自身が
『 この件をほっといて記憶を取り戻しても
きっとスッキリしない 』
と後押ししてくれた事もあり、おれ達は
この仕事に乗る事にしたのである。
そしてー…
男爵との連携で、
最近怪しい動きをしている、いわゆる『死の商人』…その一派のアジトが、この遺構のどこかにある、
という情報を突き止め…
奴等が悪事を働いているという
動かぬ証拠を掴むべく、思い切って潜入。
そして現在に至る、というワケだ。
☆
『 で、この警備だ。
こいつは当たりだな!
『『 エラそうにいうな! 』』
『 すいまっせぇーんッ!
☆ ☆

☆ ☆ ☆
殴り飛ばした男はどうやら、
倉庫の番人だったらしい。
彼が立っていた場所の奥には広い部屋があり…
部屋の端には、乱雑に片された、古い瓦礫。
そして中央部には、まだ新しい木箱が
幾つも積み上げられていた。
どうやら、最近運び込まれた箱と見て
間違いなさそうだ。
『 どれどれ~?中身はー…
エスタータが、興味津々に
まだ蓋のされていない箱を覗き込む。
中に敷き詰められていたのはー…
『 『砲弾』…?
『 待て、迂闊に触れるな!
普通の弾じゃねェ。
そいつはー…
突如、ツキモリが緊迫した声を上げる。
それでおれも察しがついた。
『 まさか…【 魔瘴弾 】かッ!
『 ああ。しかもかなり上等なヤツだ。
『 ひえっ…!
こんな危険な代物まで取り扱っているとは…
こいつは当たりどころじゃ無い。真っ黒だ。
仲間達と顔を見合わせていると、
突如として、背後…部屋の入り口の方から、
ドスドスという豪快な足音と共に、
バカでかい笑い声が響いてきた。
☆ ☆ ☆

☆ ☆ ☆
『 そいつを見られたからには、
いよいよ持って、生かして帰せねェなァ、
侵入者共ォォ…ッ!!
…振り返れば、
オーガの体躯にも負けないような大男が、
数人の、部下らしき魔族や魔物を引き連れて
迫って来ていた。
『 何者だァ?テメェ等ァ!
ユシュカの狗って所かァ?
距離を詰められる前に、おれ達は
勢いを付けて抜刀した。
☆ ☆ ☆

☆ ☆ ☆
『 通りすがりのォ…
冒険者だよ…ッ!
~つづく~