遺構内。
魔瘴弾が収納されていた倉庫に、親玉らしき
『大斧を下げた覆面マント&パンイチの大男』と、
その部下と思わしき者達が なだれ込む。
多勢に気圧されまいと勢い良く抜刀して、おれは
その大男に剣の切っ先を向け、睨みつけた。
『 あんたが噂の死の商人ってヤツか。
せっかく落ち着いてきた魔界に、
まぁた戦乱を招こうってのかい?
大男はこちらの質問を鼻で笑い、嘲りの声を上げる。
『 ハッ!どこで嗅ぎつけてきやがったか、
こっちの正体はお見通しってかァ?
悪りィが、戦争をおっ始めるバカ共は
別に俺らってワケじゃねェんだぜェ?
…魔界は元々、戦乱こそが世の常。
自分達はそれに乗っかって、少しだけ稼がせて貰おうとしているだけだ、と、大男は悪びれる様子もなく
そう続けた。
その どこか他人事な様子が癇に障ったのかー…
『 やい、ぱんつマスクッ!!
背後から良く通る声で、
怒気の混じった啖呵が響いてきた。
☆ ☆

☆ ☆ ☆
『 わかってんの?
コレ魔瘴弾だよ!?
もし本当に戦争になって、こんなもん
バカスカ撃ちまくったりなんかしたらー…
土地が汚染されて、
下手したら誰も住めなくなる!
作物とかも育たなくなるっ!
そーなったら誰も得しないじゃん!
バッカじゃないのッ!?
竪琴を凶器のように振りかざし、
とんがり帽子の頂から噴火せんばかりに、
吟遊詩人は怒声を上げる。
対して大男は、華奢なウェディの思わぬ勢いに
仰天し、一瞬目を丸くしていたがー…
すぐに我に返ると、部下達と顔を見合わせて
一転、大笑いを始めたのだった。
『何がおかしい』と憤慨するエスタータに、
大男は指を突きつける。
『 威勢が良いなァお嬢ちゃん?
だがなァ…
『誰も得しない』なら、
そもそも商売なんて始まらねェのよッ!
買う奴がいるから売る!
需要が有るから こしらえるッ!
売れた商品がどう扱われるか、なんて…
正直コッチの知った事じゃあねェッ!
俺らの懐さえ暖まりゃあ、
どーでも良いのよッ、ガハハッ!!
『 …あんたねぇ……ッ!
笑う大男を、今にも引っ叩かんばかりの剣幕で、
つかつかと歩み出ようとする吟遊詩人を、
おれは盾持つ手で制した。
『 ザラさん…?
『 やめとけ。
言い争ってもどうせ平行線だ。
世の中、価値観がどうしても合わない奴はいる。
話し合いで全てが分かり合えるなんて、
残念ながら幻想だ。
例えば魔界の環境、修羅の歴史…
目の前の男にも、道を踏み外すまでに
もしかしたら止むに止まれぬ事情ってヤツとかが
あったのかもしれないが…しかし。
『それ』に今、心を砕いたとして。
ぶっちゃけ向こうに足下をすくわれるだけだろう。
…青かった頃からの経験則が、そう結論付ける。
『 敵は悪党。ぶっ飛ばす。
…それだけでいい。
先に怒った奴がいたからか。
幾分冷静でいられる頭で覚悟を決める。
それを我が背中から読み取ったか、
後ろから、どこか楽しそうな
ツキモリの声が聞こえきた。
☆ ☆

☆ ☆ ☆
『 ふん。
商売熱心、結構な事じゃねェか。
だがー…
ヒトの命を散々、食い物にしてきたんだ。
当然、テメェが『メシの種』にされる覚悟も
できてるんだろうな?
短剣を握った腕の肩を ぐるりと回して、
ツキモリは挑発的な視線を大男に向ける。
『 言うじゃねェか、クソガキィ…ッ
その挑発に、マスクから血管が浮き出そうに
なりながら、大男はヒステリックに笑った。
『 この状況、理解してるかァ?
この倉庫に出口は一つ。
つまりテメェ等、袋のネズミなのよ!
対してコッチはこの人数!
なんなら援軍だって次々と駆けつけるぜェ?
たった四人で何ができるオラァンッ!?
詰んでんだよ、見つかった時点でなァッ!!
大男が、勝ち誇った笑い声を上げる。
確かに状況は悪いがー…なんの。
おれ達は、今よりヤバい状況を、
何度だって潜り抜けている。
絶望する程じゃあない。
仲間達と頷き合い、剣を構え直し。
おれは気合いの声を上げようとした。
…その時だった。
『 ふむゥン。
援軍は……来ないだろうね。
どこからともなく、
ゆったりとした馬の蹄の音と共に、
やたら紳士的な声が響いてくる。
そして程なくして…
倉庫入り口側に浮かび上がる影。
突然背後から現れたその影に、
大男は狼狽するのだった。
『 な、何だ、テメェは!?
☆ ☆

☆ ☆ ☆
『 死神。
~つづく~