親玉らしき大男に狙いを定めたおれは
ひとまず、後衛を巻き込まぬよう、
勢いをつけて駆け出した。
大男の方も、受けて立つと言わんばかりに、
戦斧を軽々と片手で振りかざしつつ向かって来くる。結果、戦場となった倉庫の中心で両者、
味方から離れて一騎打ちの形となった。
空気を引き裂きながら振り下ろされる戦斧の一撃を、おれは敢えてかわさず、小盾で受け止めた。
金属同士がぶつかる鈍い音が、遺構内に響き渡る。
『 ぐ…ぬ…ッ!
腕から全身に伝わってくる、重い衝撃。
歯を食い縛るおれを見て、大男は勝ち誇ったように
マスクの下の目を細めると、
斧持つ手に更なる力を込めてきた。
『 オラァン、どしたァァッ??
『 な…め るなよッ!
圧力に負けじと、おれも盾持つ腕に力込め、
不敵な眼差しを大男に返す。
どうやら奴は、見た目どおりの
かなりのチカラ自慢のようだがー…
おれとて炎の民の端くれだ。
ヒト同士のチカラ比べで
簡単に遅れを取るワケにはいかない。
渾身の力で、じりじりと斧を押し上げてゆく。
まさか体格で劣る奴に押し返されるとは
思ってなかったか。
大男は驚きで一瞬目を見開くと、
斧持つ腕を、血管が浮き出る程に膨張させながら
今度は必死の形相で押し込んできた。
おれの方も、元々赤い顔を更に赤くして、
鼻から蒸気を吹き出さんばかりに
全身の筋肉を膨張させてゆく。
そのまま両者、口角を上げたまま睨み合うと、
一瞬後にはプライドを賭けた鍔迫り合いが
再開されるのだった。
『 ふ ん がァァァァッ!!
『 ぬゥゥおらァァッ!!!
『 やれー!カシラーッ!!
『 いっけぇぇっ!
ぱんつマスクなんかに負けるなーッ!
『 はぁ…マンドリルのケンカのが
まだスマートだぜ…
…後ろの方で、戦闘を忘れたギャラリー達の
野次やら溜め息やらが聞こえてくるが、
いちいち気にしちゃいられない。
正直、奴を少し侮っていた。
純粋な体力勝負では、おそらく向こうが上。
早めにケリをつけねば、押し潰されるのは
おれの方だ。かくなる上はー…
( “ 鉄壁の進軍“…!
『 な、にィィ…ッ!?
奥の手を発動し、急に出力が上がったおれに、
狙い違わず奴は動揺している。この期を逃すな…!
盾持つ腕に、全霊を込め、
おのれを鼓舞するべく、叫ぶ。
『 おれをォ…潰したけりゃあ…ッ
ギガンテスでも…ッッ!
つ れ て こォォォいッッ!!!
気合いと共に盾を逆袈裟に振り抜き、
ついに斧を弾く!!
『 な、何ィィッ!!?
その衝撃で、大男は大きくよろめいた。
それを確認すると間髪入れず、
おれは体勢低く構え、
剣に闘気を纏わせて、強く地を蹴った。
( “ 超はやぶさ斬り“…ッ!
そして払い抜けざまの、俊速の四連斬ッ!!
連撃は見事に大男の足下をかっさらい、
その巨体は宙を舞ったのだった。
『 ッしゃあっ!
☆ ☆

☆ ☆ ☆
程なく、大男は頭から墜落してきた。響く轟音。
重量のせいか、頭が床に埋もれたが…
まあ死んではいない、だろう、た、たぶん…
親玉の戦闘不能を受けて、
手下達も戦意を喪失したようだ。
もっとも…すでに半数くらいはツキモリやクーに
やられていたようだが。
その様子を見て、剣を鞘へと納める。
『 エクセレント…!
また腕を上げたな、ザラターン君…!
徹頭徹尾、観客に徹していた男爵の拍手が、
この戦いの終わりを告げた。
快勝である。
終わってみれば、勝負は一瞬であった。
☆ ☆ ☆

☆ ☆ ☆
『 そんなこと言わずに!
闇商人はもう辞めるからよッ!
許してくれよ?
な!なッ!!
…戦闘終わって四半刻近く。
拘束された大男の、幾度とない懇願が
倉庫に響いていた。
『 …悪いけど、命乞いなら
お上にしてくれよ。
こっちも生活かかってるんでね。
目を座らせて、おれは冷酷に うそぶいた。
別に今回の仕事は生活の為だけに
請けたワケでは無いのだがー…
でも我ながら真っ当な判断だとは思う。
ツキモリも腕を組んで頷いた。
『 極悪人をゴメンで済ませて
野に放つような奴ァ、
よほどの阿呆か、真の勇者か
どっちかくらいなモンだぜ。
残念ながら僕らは、そのどちらでもねェ…
…そんな白けた空気の中。
『 そうかァ…?
大男がマスクの下で、
微かに笑った気がした。
( ……?
『 案外、よほどの阿呆って奴かも
知れないぜェ!?
『 ツキモリ、危ない!
突如動き出す状況。
エスタータが悲鳴にも似たトーンで、
ツキモリの名を呼んだ。
~つづく~