『 執行者…だって?
…目の前の紅衣の騎士からマトモな答が
返ってくるとは思って無かったので、
おれは少し狼狽した。
今、確かに『執行者』と呟いたような気がしたが…
執行者、か。
一体、何を執行するのか…は…
まあ、おれ達が今、狙われている事で
ある程度想像がつこうというものだがー…
『 アレか?ゼクレス王家の闇を支える
暗殺組織、的な…?
適当に見当を付けて
ゼクレス出身の相棒に尋ねてみる。
だがツキモリは、すぐにかぶりを振った。
『 いや…
少なくとも、執行者なんて名では
聞いた事ねェな…
それに…よく見ろ。
☆ ☆ ☆

☆ ☆ ☆
『 暗殺者にしちゃコイツ、
派手すぎるし。
『 た、確かに…!?
なんか派手だなぁ、とは思ってた…!
『 ……
真っ赤な重装兵。
お世辞にも、暗殺に適した格好とは思えない。
それに…
よく見れば、奴の纏う甲冑には、
エムブレムが刻まれているようだ。
日輪と正三角形を組み合わせたような図形を外枠に、中心には薔薇の花とも、災禍とも取れる、
渦巻くような奇妙な意匠が施されている。
見覚えは全く無いが…少なくとも、
ゼクレス魔導国の国章で無い事だけはわかる。
『 覚えが無いならそれでいい…
安心して消えるがいい。
『『 !! 』』
☆ ☆ ☆

☆ ☆ ☆
問答は終わりとばかりに、
赤騎士は再び音もなく間合いを詰めて来た。
暗がりの水脈洞に、
刃の旋律が反響しながら鳴り響く!
嵐のような連撃への対応に追われながら、
おれは受け応えを少し後悔していた。
どう見ても、おれ達を捕らえて尋問しようという
雰囲気では無さそうだ。
一旦、話だけでも合わせておくべきだったか。
それに、さっきより剣捌きも少し激しい気がする。
アレか?クールそうに見えて、実は
派手と言われた事にイラッときてたりするのか?
どうあれ、こうなった以上、
逃げるにしても、突破口を切り開く以外に
おれ達が助かる道は無い!
( 奴の剣をよく見ろ!
隙は…付け入る隙は無いか…!?
剣戟の嵐の中。
観察眼を働かせようにも、相手の剣が疾すぎて、
なかなか思うようにはいかない。
必死にいなしながら、
相手の剣技ー…心を見極めようとする。
( 奴の剣技には、何か…他の剣士には無い
『違和感』を感じる気がする。
もう少しで、それが何か掴めそうなんだが…!
そんな中、不意に連撃の一部を受け流し損ね、
鋭い突きに、おれは左の肩口を切り裂かれてしまう。
『 ぐゥッ!
かすり傷。
だが、それに気を取られた一瞬が命取り。
次の一撃は躱せない!
やられると思ったその瞬間。
赤騎士の振り上げた腕に、火球が炸裂した。
『 気ぃ抜くな!
『 悪い助かった!
ツキモリのお陰で命拾い。
奴に大したダメージは無かったようだが、
衝撃で、剣を振り下ろすタイミングが僅かに遅れた。
その隙に、奴と大きく距離を取り、
すばやくツキモリと合流する。
仕切り直しにと息を整えようとするがー…
文字通り、息つく暇など、無かった。
今度はおれ達の周りを取り囲むように、
無数の赤黒い光球が浮かび上がる。
正面を見れば、赤騎士が、剣を持っていない方の
手の平をこちらに向けていた。
『 こいつは“邪炎波“…!?
魔剣士かッ!
赤騎士が無慈悲に手の平を結ぶと同時に、
おれ達を包囲していた光球群が、一斉に
襲いかかってくる!
『 ンなろォォッ!
“ ギガスラッシュ“!!
『 “イオラ“!
相棒と、背中合わせに回転するように
光の技と呪文を放ち、
闇の光球を残らず叩き落とす!
光陰のエネルギーが相殺し、おれ達の周りで
大きな爆発が巻き起こった。
『 ちっ…このままじゃ
二人がかりでも そのうち殺られる。
何か策は無ェのか。
爆発の起こす噴煙を隠れ蓑に、
肩で息をしながらツキモリが舌打ちをする。
邪炎波を完全に相殺する事は出来なかったようで、
僅かに抜けてきた暗黒闘気に、
おれ達は若干のダメージを受けていた。
剣技でも魔力でも向こうが上。
ツキモリの言う通り、このままではジリ貧だ。
だがー…
ここにきて、ようやく
『違和感』の正体を掴めてきた気はする。
☆ ☆

☆ ☆ ☆
『 あいつは間違い無くおれより強い。
剣技じゃ、速さも、重さも、正確さも
…全部上だ。
だが、おれのカンが確かなら…
二人がかりでなら、
手が全く無いワケじゃあない。
一か八かだ。乗るか?
『 おもしれェ。
乗ってやろうじゃねェか。
『 ふ、よしきた。
~つづく~