
絶対絶命。
クーに向かって振り下ろされるかに思われた
赤騎士の剣が。
しかし、突然、ピタリと止まる。
『 !?
全力で駆け寄りながらも、おれは奴の剣が
止まった理由を探ろうとしたのだが…
その必要は無かった。
疑問の答らしきモノは、奴自身の口から
静かに紡ぎ出されたからだ。
『 お前は…『何』だ。
アストルティアに属する者では無いな…?
☆ ☆ ☆

☆ ☆ ☆
『 ……えっ……
起き上がったクーは、
突然の赤騎士の呟きに、目を見開いて
呆然となった。
( クーが…
『アストルティアに属する者では無い』…?
おれも、その言葉の意味するところと、
『それ』を瞬時に見極めたらしき
赤騎士の素性が、改めて大いに気になったが、
しかし。
( それ以上に今は、考えてる時間が惜しい!
クーの記憶探しも、身の上探しも。
…その命あっての物種なのだから!
『 だァァっしゃあァァッッ!!
おれは赤騎士と十歩ばかりの距離まで詰めた所で
思い切り地を蹴って跳び、
我が身を弾丸と化さんばかりの勢いで、
奴に渾身の蹴りをかました。
『 !!!
クーに気を取られていた赤騎士は
完全に不意を突かれたようで、
我が蹴りを無防備に喰らって
後方に大きく跳ね飛ばされてゆく。
その隙に、おれは放心状態のクーを担ぎ上げ、
すかさず転身。
そのまま仲間と合流すべく駆けるのだった。
『 ぬぅおおおォォッ!!
赤騎士の気配を背中に感じながら、
祈るような気持ちで、死に物狂いダッシュ!
大空洞への細い通路へと滑り込む!
そして。
この瞬間を待ち構えていたらしき
ツキモリが、すぐさま高めていた魔力を暴走させた。
『 爆ぜろ…!“イオナズン“ッ!!
言霊と共に放たれた魔力は、
天井近くで臨界点を超え、
大爆発を巻き起こす!
☆ ☆ ☆

☆ ☆ ☆
かくして、とてつもない轟音と共に
天井の岩盤は大崩落し…
思惑通り、おれ達の背後…大空洞への入り口を、
見事に塞いだのだった。
さすがの赤騎士も、コイツを撤去するには
それなりの時間を要するはずだ。
『 ぜぇ…ぜぇ…ッ!
や、やったな…!
『 ったく馬鹿師弟が。
ヒヤヒヤさせんじゃねェよ…!
荒い息を吐くのも束の間、緊張の糸の切れたおれは、魔族の悪態に返事するのも忘れ、
クーを下ろしてすぐさま、
倒れ込むように地面に伏した。
『 ぶっ……はぁ~~ッ!
クー、怪我ぁ無いか?
援護は助かったけどな、
あんまり無茶はするなよ…
『 う、うん、大丈夫。
…ゴメン。
無気力に地に伏せたまま、
口を尖らせるおれを見ながら、
バツが悪そうに、クーが頭を掻く。
…まあ、おれも似たような状況で暴走した記憶が
あるので、あまり強くは言えないのだが…
『 な、なあ、ザラ。
オレ…さ…
と、クーが改まって、神妙な顔をした。
その顔で、言わんとしている事の察しはつく。
『 …ああ。さっきの、だろ?
おれも確かに…聞いた。
クー、お前はー…
…その時。
『 う、うああ…ッ!!?
『『『 !? 』』』
大空洞側から、エスタータの
怯えるような悲鳴が聞こえてきた。
『 ち、今度は何だよ…!
3人、顔を見合わせ、とにかく走り出す!
『 エスタータ、どうした!?
程なく吟遊詩人と合流すると、
彼女が我が質問に答えるまでもなく、
おれ達は、その悲鳴の原因に気づくことになった。
何故ならー…
☆ ☆

☆ ☆ ☆
…彼女の眼前に、
見慣れない人影が、二つあったからだ。
『 !!
人間系の魔族と思しき、男女。
男の方は、ウェーブがかった前髪に、
着崩した真っ白な紳士服が特徴の、
なんかチャラそうな優男。
女の方は、薄緑の髪を結い上げるように束ね、
その身体には、エナメル質の
妖艶なドレスを身に纏っている。
場に全く似つかわしく無い彼等のこの格好に、
我が冒険者の勘が、
逆に けたたましく警鐘を鳴らした。
コイツらは絶対、只者じゃない。
一難去って、また一難、という奴なのか…
( 勘弁してくれ…!
『 あっれェー!?
あの赤いのも、見た目ばっかで
案外、つっかえませんねー?
紳士服の男が、間伸びした声で、
額に手を当てながら、先程塞がった通路を
呑気に眺める。
『 意外と彼らが優秀なのかもね?
お姉さん、関心しちゃった♪
ドレスの女がこちらを見つめ、
楽しそうに目を細めた。
『 遠路はるばる、お疲れ様。
うふふ…♪
~つづく~