
ベルヴァイン地下水脈、大空洞。
やっとの思いで赤騎士を振り切った おれ達の前に、着崩した白い紳士服の男と、
エナメルドレスの女が立ち塞がる。
二人とも、場違いな出立ちと笑顔で
おれ達を迎えているのだがー…
奴らの纏う異様な雰囲気は、
先程まで対峙していた、赤騎士の纏っていたそれと
良く似ているように感じられた。
特にー…ドレスの方の、腕のタトゥーは、
あいつの鎧に刻まれていた紋章と
同じモノに見える。
( 嫌な予感しかしねぇよ、畜生…!
☆ ☆ ☆

☆ ☆ ☆
抜刀しつつ警戒を強める おれの横で、
ふとエスタータが、男の方を見て
あっ、と声を上げた。
『 あんたもしかして、『ホースト』?
街で聞いた背格好と おんなじ…!
『 おや?
オレってそんなに有名人です?
いやー、参ったね!
紳士服の男は、己を指差して おどけてみせた。
なんだ?知り合いー…なワケ無いか。
そう言えば、さっきエスタータの口から
その名を聞いたような気もする。
確か、リンベリィが最近…
『 そう、オレこそが…!
『強くて☆かわいい☆最強魔王☆』な
リンベリィ様に仕えてるっ♪
新人しもべのホーストでっす☆
以後、お見知り置きを!
…思い出すまでもなく、
ホースト自身による自己紹介が行われた。
場が珍妙な空気で包まれてゆく。
『 …茶番はいい。テメェ等も、
『執行者』ってヤツなのか?
痺れを切らしたらしきツキモリの質問。
『執行者』という、その言葉に反応したのだろう。
一瞬、だが明らかホーストの笑顔が固まった。
奴は、その顔を隠すように片手で覆うと…
『 …なんだ…。
もう割れてんのかよ。
あいつも見た目に寄らず、
口が軽い奴だぜ…
…豹変したように無表情になり、舌打ちをした。
その様子を見て、ドレスの女がクスクスと笑う。
『 話が早くていいじゃない♪
お姉さんは
【執行者ニニエルザ】。
『 ち…同じく、
【執行者ジブアジブ】…
あの赤い鎧の奴はー…
まぁ、どうでもいいか。
『 ニニエルザ…ジブアジブ…
やはり奴等も…
執行者だった。
あの赤騎士と同格であろう奴等が、
まだ二人も…!
状況は絶望的。
だが、どうにかして突破口を開かねばならない。
『 魔王を創失させ、
代わりにリンベリィを傀儡にして
ゼクレスを裏で操り…
戦争を起こそうとしたり、
ならず者達を使って武器を集めさせてるのも
あんた等なのか。
まさか、しもべとして
中枢に入り込んでるとはな。
…ひとまず時間稼ぎも兼ねて、
率直な質問をぶつけてみる。
それを受けて、ホースト…ジブアジブが、
皮肉そうな笑みを浮かべた。
『 んー…ちょっと違うな。
『魔王アスバル』を消し、
リンベリィに取り入ったまでは
まぁ概ね当たりさ…
だが、
武器集めてんのは『事のついで』ってヤツだし… 戦争ふっかけたのは、あのお嬢が
勝手にやった事だ。
何よりー…
ジブアジブは、うんざり顔をして、
ため息と共に肩をすくめる。
『 あンの お嬢サマが
簡単に傀儡になるようなタマなら、
オレぁ、こんなに苦労してねぇんだよ…!
ああ…!メンドくっせぇ…!
お陰でストレス溜まっててな。
ネズミでも潰して発散しねぇと
やってらんねんだわ…!
ジブアジブのニヒルな笑みに、
狂気じみた怒りが混じる。
『 と、いうワケなの♪
あなた達には悪いのだけど…
彼の憂さ晴らしに付き合ってあげてね♪
ニニエルザは唇に人差し指を当てながら、
一切、己のペースを崩さずに微笑んだ。
どちらも狂気じみているのには変わりがない。
『 と、いうワケでぇ…
キミ達は~…!
ジブアジブが再び不気味に豹変し、
ホーストの笑顔になり…
『 ハイ、ハイ、ハイハイハイハイ☆
死んじゃって~死んじゃって~
死・ん・じゃっ・てぇー~ッ☆☆☆
……てなぁッ!!
そしてその笑顔はすぐに、
ジブアジブの邪悪なそれに戻った。
『 冗談じゃねえ!
そんな八つ当たりで
殺されてたまるかッ!!
おれ達は、勢い良くそれぞれの得物を構えた。
勝算は無い、まだ策も思いつかないがー…
とにかく、黙ってやられるワケにはいかない!
『 そうだ…
その時…背後から急に、何者かが呟く声。
それにやや遅れて、爆破音が響いてきた。
慌てて振り返ると、そこにはー…
☆ ☆ ☆

☆ ☆ ☆
『 我が管轄だ…
『 最悪かよ…!
~つづく~