続きです。
新メンバーを迎え、バトルロードで勝利を重ねた我が魔軍。
モーモン・スライムナイト・パペットマン・たけやりへいの4匹。
しかし、Cランクへのランクアップ試験を目前に、
戦いの方向性の違いからチームはバラバラになってしまいました。
そんな彼らの様子を見ていた1匹の魔物が姿を現します。
戦姫の腰巾着・ホイミスライム
彼はステンレスという名前です。
王家の迷宮で戦闘神アンルシアのストレス発散に付き合うのが彼の仕事です。
そのスキル構成は、そんじょそこらのホイミスライムと変わらないので特筆するようなことはありません。
回復・治療・蘇生は使えますが、
『バイキルト』や『天使の守り』は覚えていません。
王家の迷宮ではアンルシアが馬鹿みたいに強いので、
彼はあまりがんばらないのです。
「もし失敗してもあいつがなんとかしてくれるからいいや」
そんな心構えがしっかりと身に付いています。
一緒に働きたくはないタイプですね。
しかし、ヒーラーとしての資質が高いのは紛れも無い事実。
恐れていた対抗馬の出場に、凍りつくモーモン。
新たな仲間を歓迎するたけやりへいとは対照的に、彼の心はぼうそうドルマドンを受けたかのように暗く沈んでいくのでした。
翌日。
ランクアップ試験対策会議の場にモーモンとスライムナイトの姿がありませんでした。
テーブルの上には二通の手紙。
モーモンからの手紙の文面は長く、便箋を何枚も使用していましたが、
要は不定愁訴を訴えるものです。
「生まれ故郷であるコルット地方へ里帰りしたい」
しばらくひとりにしてあげましょう。
対して、スライムナイトからの手紙は極めてシンプルでした。
「自分探しをする」
その一文だけす。
妙に達筆でした。
前回の悶着が相当こたえたのでしょう。
宿舎は綺麗さっぱり片付けられていました。
彼は遥かなる旅路に就いたのです。
さあ、必然的に残ったメンバーでランクアップ試験に臨まなければなりません。
回復のホイミスライム。
強化と蘇生のたけやりへい。
中途半端なパペットマン。
力不足な感じが否めないパペットマンには、
新たに『ポイズンスケイル』を与えました。
さらに『とりなお草』によってきようさスキルを取得。
『ロストアタック』と各種デバフ、状態異常によって敵軍を撹乱させます。
サポートモンスターにねこまどう氏を選び、こちらがメイン火力。
バッジパック銅を12こくらい開けて準備万端です。
開幕戦。
一気呵成に攻め込む一同。
敵の強烈な攻撃にひやひやしますが、
みのまもりの高いたけやりへいが蘇生を使えるので大きなピンチを迎えることなく、順調にコマを進めます。
そして、戦いの果てに現れるランクアップ試験のボス。
相手の姿を見たパペットマンが定時であがろうとしますが、
ここで退くわけにはいきません。
踊りつかれたパペットマンのMPは枯渇し、
一撃必殺の破壊力を持つ痛恨の一撃を受けたねこまどう氏は何度も倒れます。
しかし、ホイミスライムとたけやりへいの抜群の連携によって逆境をはねのけた彼らは、
無事に勝利を収めることができました。
Cランク到達です。
酒場に戻った一行は昇級できたことを祝います。
たけやりへいは戦いの内容を思い返しては満足そうに微笑みます。
戦いの最中でもポーカーフェイスを崩さなかったホイミスライムにはまだまだ余裕がありそうです。
しかし、パペットマンは「しんどい。割に合わない」と文句ばかり言っています。
そんな彼に、ランクアップで勢い付いたたけやりへいが
「明日の試合もがんばろう」と声をかけました。
その声を無視して、どこからともなく一枚の紙を取り出して何か書き始めるパペットマン。
その紙を覗き込んだたけやりへいがおどろきとどまりました。
なんとそれは有給取得の申請書でした。
しかもその期間は、ちょっとどうかと思うくらい長かったのです。
「まあ、次のランクアップ試験くらいまでは休むから」
臆面もなくそう言って酒場をあとにするパペットマン。
彼はすでにレギュラー争いへの興味を失っていたのです。
「ランクアップ試験での席は俺の物」
そう確信する彼には何を言っても無駄でしょう。
残されたのは、良くも悪くもやる気は充分のたけやりへい。
やる気は無いけど実力はあるホイミスライム。
深刻なメンバー不足に発する言葉を見つけられない2匹を尻目に、
ガタラのモンスター酒場は普段通り静かな店じまいを始めるのでした。
メンバーのメンタルの弱さが原因で身動きが取れなくなった我が魔軍。
着実に貯まるバトルロード参加権。
最後にレギュラーの栄冠を勝ち取るのは誰だ!