アストルティアには数千年の歴史よりも古い、数万年の神話の時代がある。女神ルティアナが種族神たちを創造して、アストルティアを人間や各種族たちが生きていける世界にした。のちに異界滅神ジャゴヌバが訪れて、世界が切り離されて魔界になる。ジャゴヌバから吹き出る魔瘴に侵されたものは耳元でピュージュがささやき続けるようになり、凶暴になるといずれ同士討ちでもはじめちまう。はじまりの大魔王ゴダは魔界の「ガス抜き」のためにアストルティアに攻め込んだ。
ジャゴヌバと女神ルティアナが封じられたあと、種族神たちがけんかをして末弟グランゼニスは肉体を失ったけど、自分のチカラを宿した勇者が世界に生まれるようにした。ルティアナそのものである光の河を、ジャゴヌバと契約した者が渡るときにたぶんこのチカラは発動して、大魔王がアストルティアを訪れると世界に勇者が生まれることになる。最初の勇者は双子の兄弟で、彼らがゴダを退けるまでが神話の時代とされている。
双子の勇者アシュレイとレヲーネが生まれたレンダーシア。
そこではゼドラ族とレビュール族が長く争っていて、双子はゼドラ族長の息子たちだった。グランゼニスの巫女と名乗るばあさんから、双子のひとりをレビュールに養子に出せと言われて弟レヲーネが選ばれた。ほんとうに神託があったかどうかはわからぬが、そうしなければ「うちには勇者がいるんだぜ」とゼドラがレビュールに襲いかかりそうなくらいなかが悪かった。
双子の勇者は剣聖ガーニはんの教えを受けて、成長すると若い巫女ダフィアを加えた4人が大魔王を迎え撃つ。ガーニはんが大魔王と刺し違えると、「呪いあれ」の言葉とともにすべてが終わって振り向いたそこには石になったレヲーネの姿が残されていた。傷心のアシュレイとダフィアは結ばれると神聖ゼドラ王国が建国されて、勇者の血筋は後代に伝えられた。
これがアシュレイのいう「ダッセえよな」という話。
アシュレイは剣をふりまわして戦う勇者だけど王様としてはばかだった。いままでは師匠と弟がものを考えてくれたから、こんどは王妃ダフィアに考えてもらうだけのおかざり王だった。ひとを疑うことを知らないまっすぐな王は、自分に向けられない悪意にことのほか鈍感だ。ゼドラとレビュールの争いは鎮めなければならぬ。新しい国が二つに割れてはならぬ。それには勇者はひとりでよいし、生き残る部族はひとつでよい。ダフィアはそう考えていた。大魔王と勇者が戦う前からそう考えて、双子の勇者と剣聖の三人に呪いの札を渡すとひとりしか生き残らないようにした。
生き残った暗愚な王は、王妃に言われるままにひとりの勇者アシュレイとひとつの部族ゼドラだけが生き残る統治に手を貸した。虐げられたレビュールが王妃の望みのままに反乱すると、すべてをみなごろしにしたのはアシュレイだ。燃え上がる火と横たわるしたいの上で、弟の義兄トランブルを相手に剣をおさめて話しあおうなどと言ってももはやすべては手遅れだった。もちろん手遅れにしたのはアシュレイだ。みんなを守る勇者の光を発動させて、トランブルの剣から我が身を守った彼はめでたく叛将を討ち取った。
そんなアシュレイが、しんかの儀で悪神になってなにをしたか。やっぱり彼自身ではなにもせず、頼りになる弟の言葉に従うだけだった。アストルティアではなく天星郷に心域をつくりだして、エネルギーを吸い上げさせたのも彼の考えたことじゃない。
チンパンの羽つきクルットル曰く、女神エネルギーを使いすぎて制御装置が暴走したあげく、彼の前任者が命を落としたからもっと効率よくエネルギーを吸い上げるゴールドに目をつけたという。フォーリオンの周囲に浮かぶだけの試練場に何のエネルギーが必要なのかねと問いただしたくなるが、これって羽つきどもが忘れた神殿を守る結界に使われてるエネルギーへの攻撃だよねということに気づかないのは暗愚な羽つきくらいのものだろう。
うまくいくかいかないかじゃない。自分で考えることを放棄したものは「ダッセえよな」というしかない。そう思えば空の上に浮かぶ都市を守ろうとするものも奪おうとするものも、どちらも暗愚にしか思えぬのだが、神話の時代にばかものどもを利用したのがダフィアだったというならば、天星郷でばかものどもを利用しようとしているのは悪神レヲーネになるのだろうか。
ばかものどもを利用するものが勝者になるとは限らぬが。