なりきり冒険日誌~ぬいぐるみを求めて(3)
思ったよりも手間をくったが、ゼラリム姫のお使いは無事達成した。あのおしとやかな姫をして、浮ついた様子ではしゃぐ姿を見させるとは、さすがぬいぐるみの魔力である。私としてもその様子が見られて眼福この上なし。この上ない報酬だ。
無論、実際の報酬はそれと別にしっかりいただいた。ぬいぐるみのお礼に宝石。王族らしい気前の良さというべきか。
もっとも、原産地まで行く羽目になったことを考えれば手間賃程度のものではあるが……
……さて、今、目の前にいるのがその元凶、スピンドル兵士長。彼にも一応目通りしておいた。あまり見たい顔ではないのだが、諸国の人物を観察せよと言われている以上、素通りもよろしくない。
ガートラントの華を自称する彼だが、小太りの体系は華というより団子である。ガートラントは友好国だが、華の美しさでは我がヴェリナードが数段上のようだ。
ぬいぐるみを喜ぶ庶民の美的感覚が理解できないと、とのたまうガートランドの華。あまり美的感覚を語ってほしくない類の人物である。
だが、そういう華ほど散りもせず枯れもせず、いつまでも咲き続けるのが世の常。この太平楽な男も、多少の間違いや失敗ではへこたれるつもりは無いようだ。
まったく、たくましいことだ。