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フォースマエストロ

ミラージュ

[ミラージュ]

キャラID
: DX235-898
種 族
: ウェディ
性 別
: 男
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 130

ライブカメラ画像

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ミラージュの冒険日誌

2020-11-10 21:50:44.0 テーマ:その他

王なき都の戦士たち(3)~なりきり冒険日誌【※ver5.2に関する記述有り】

「元ファラザードの戦士が、バルディスタ城に……か?」
「ああ」

 スライムのスライドは、城にたなびく濃紺の旗を鋭く見上げながら風の行く先に目を凝らしていた。  スライム族の肉体は小さく弱い。だがそれ故に彼等は徒党を組み、知恵をつける。彼等の情報網は武力とは全く違う意味での、目に見えない、しかし確かな力だった。
 もし私が魔界勢力を率いる将だったなら、真っ先に彼らを配下に引き込むだろう。

 スライドはなおも続ける。

「……そいつはヴァレリア捜索に関して、ベルトロから何か頼まれたらしい。そんな大物を動かすくらいだから、けっこう裏は取れてるんじゃねえか?」
「フム……」

 ジャンビも言っていた。ベルトロには考えがある、と。どうやら、出任せではなさそうだ。

「だが、その冒険者な……ファラザードの味方じゃあなかったのか? 確かバルディスタの基地を強襲したこともあっただろう?」

 ……ま、前大戦でファラザードの輸送隊にいた私が言うのも何だが……。

「さあな。案外、報酬さえ貰えれば、どこにでも手を貸す奴なんじゃねえか?」
「……割には合わんなあ」

 私はかぶりを振った。
 件の冒険者には元々不可解な行動が多く、その立ち位置も目的も不明である。今あれこれ推測しても仕方のないことだが、気になる存在だ。報告書には一筆書き足しておこう。

「……で、スライドは魔王が生きてる方に賭けているわけだ」
「まあ、どっちかと言えばな。けど軍が落ち目なのも確かだし、いつでも逃げれる準備はしてるぜ。心中は御免だ」

 悪びれもせずに彼は言った。危機管理はアウトローの天性である。この点、先日出会った脱走兵……ホーゲンとは一味違う。

「確かに軍の状況は厳しそうだ、な……」

 私は空を仰いだ。視界に映り込むのは重厚な城壁に守られたバルディスタ城。  かつて、あのそびえ立つ尖塔の鋭さが、はためく濃紺の軍旗が、血と氷の掟でこの街を支配していた。
 今、主なき宮殿が日没の日を受けて、バルディスタの街に巨大な影を落とす。落日。

 だが日はまだ沈み切ってはいない。

 野盗や反逆者の起こす騒ぎに対して、ベルトロ麾下の兵たちも指をくわえて傍観していたわけではなかった。街に侵入した野盗の群れと兵士達が衝突する場面を私も何度か目撃していた。
 バルディスタ軍は魔界随一の強者揃い。規模こそ半減したものの、大戦を経て練度は更に高まっている。私の見たところ、まだまだ野盗に負けるような戦力ではなかった。
 事実、精強なブラックアーマーは黒い雪崩のように略奪者を強襲し、朽ち木を押し流すが如く次々と敵を蹴散らしていった。
 だが、それにも拘わらず……
 略奪者達は退こうとしなかった。賊の群れは決して総崩れになることなく、踏みとどまって抵抗を続けたのである。

 ベルトロも頭が痛いだろう。戦力で言えばまだまだ城の兵士たちが上である。だが兵士に最も求められるもの、それは"恐怖"なのだ。
 兵士に戦いを挑むことは国家への反逆を意味する。たとえ目の前の兵士を倒せたとしても、国を、ヴァレリアを敵に回せばどうなるか……その恐怖こそが兵士にとって最大の武器なのである。
 今の彼らには、それが無い。だから野盗は退こうとしない。
 最終的には兵士たちが勝利したが、かなり損耗したようである。こんな戦いを続けていては、じわじわと戦力を失っていくだけだ。
 恐怖の中心を、取り戻さない限りは……
「結局、ヴァレリアの生死が全てを決める、か」
「魔王ってのは、おちおち死んでもいられニャいんだニャー」

 魔界の黄昏に、猫は長い声で鳴く。
 不安げに街を歩く市民の呟き声が、揃いも揃ってヴァレリアの名を呼ぶ。声は加速度的に数を増し、やがて街中に広がった。まるで魔王召喚の呪文を唱えるかのように、バルディスタの全てが彼女を求めていた。
 かがり火の炎は揺らめき、空は渦巻く。不穏な風が街に降り注ぐ。
 さて、召喚の儀式は"氷の魔女"をこの街に呼び戻すだろうか?
 返事は無い。少なくとも今は。

 一方、王の名を呼ばぬ者もいる。

「さて、仕事だ」
 
 と、私の後ろで声を張り上げたのは闇商人のピッケである。
 彼は仕入れた商品を手際よくバザーに並べていく。空になった荷馬車が忙しくかけていった。泣きごとなど一つもない。

「魔王様がいなくても、俺達で街を回してかねえとな」

 彼は配下の商人たちに檄を飛ばした。
 言葉少なに頷く男達の顔には、力なき者の矜持が深く深く刻まれていた。

(続く)
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