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フォースマエストロ

ミラージュ

[ミラージュ]

キャラID
: DX235-898
種 族
: ウェディ
性 別
: 男
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 130

ライブカメラ画像

2D動画 静止画
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ミラージュの冒険日誌

2021-01-31 20:25:32.0 テーマ:その他

大魔王城の魔法戦士(7)~なりきり冒険日誌【注:ver5.3までのストーリー記述有】

 魔王ヴァレリアはその場を去った。
 捨て台詞は、こうだ。

「貴様の保証はアテにならんが、ベルトロの目は確かだ。損得に関してはな」

 バルディスタの副官からもらった通行手形は、お守り以上の役割を果たしてくれたらしい。
 だがこれで一安心、というわけにはいかなかった。
 何しろ我々の前には、もう一人の魔王が立ちはだかっていたのだから。
 彼は去っていくヴァレリアに優美な微笑みを返すと、我々を自室に案内した。兵達の奇異の目に晒されながら我々は後をついていった。まだ事情が呑み込めない。
 ……いや、呑み込むことを頭が拒否している、というべきか。
 一方、ゼクレスの魔王は肩書に似合わぬ人懐っこい笑顔で我々を迎え入れた。
「あらためて、久しぶりだね」
 リルリラは私と顔を見合わせた後、おずおずと口を開いた。
「えっと……シリルさん、だよね?」
 彼はあっさりと頷いた。私は額に手をやった。
 冒険を生業とする者には、あり得ないことを受け入るべき瞬間が定期的に訪れるものだ。今がそうだった。
 私は意を決して口を開いた。
「魔王アスバル閣下、とお呼びすべきですかな」
「どちらも僕の名前さ。今ではね」

 そしてシリル……アスバルは語り始めた。
 母太后エルガドーラの死とオジャロス大公の陰謀。魔導国ゼクレスを絡めとる歴史と因習。一度は魔王としての重責に耐えかねて、アストルティアへ逃げ出したこと。
「君たちと出会ったのは、その旅の最中だったんだよ」
 彼は述懐した。
 私と"青年学者シリル"の初対面はジュレットの街だった。
 モンスターの襲撃で避難令が出ている拘わらず、呑気に街を歩いている間の抜けた旅人。それが彼の第一印象だった。今にして思えば、彼には慌てる必要など一つもなかったわけだ。
 その後、私は彼の旅に同行し、ヴェリナードまでの道のりを護衛したわけだが……
 冷汗が一つ。
 ゼクレスの魔王をヴェリナードに案内したことが知られたら、私は魔法戦士団を首になるかもしれない。  そんな私に悪戯めいた視線を向けながら彼は話を続ける。
「あの後、女王陛下やオーディス王子にも会えたよ。……思った通りの人達だった」
 彼の顔に一瞬、泣くような笑みが浮かんだ。私は女王陛下のご尊顔と、ゼクレスのエルガドーラ像を頭の中に並べた。そしてオーディス王子と目の前の魔王を。
「君が仕えようと思うのも当然だね。ゼクレスも、あんな風ならよかったんだけど……」
 そこまで言って、彼は首を振った。
「いや、僕があんな風に作り変えなければいけないんだ」
 断固たる決意の顔があった。リルリラが透き通った羽を揺らしてその顔に近づいた。
「シリルさん、なんだか逞しくなったみたい」
 魔王ははにかむように微笑した。
「立場を捨てて旅をして、知らない景色を見た。知ってる景色も見た。どの世界でも、人は同じものを見てると知った。……ミラージュからゼクレスの歴史を聞かされた時は、正直、焦ったけどね」
 私は赤面した。旅の最中、噂話と称してゼクレス魔導国の話をしたのを思い出したのだ。エルトナではこういうのをキリカに説法と言うんだったか……?
「……耳が痛かったよ。外から見れば、そういう風に見えるのかとね」
 部屋に掲げられたゼクレスの旗が揺れる。
「お前も目を背けずにちゃんと向き合え。そう言われた気分だった」
「……どうも……」
 私は返答に窮し、沈黙した。居心地の悪い空気だ。こういう時に限って雷は鳴りやんでいる。せめて間を持たせてくれ!
「窮屈な祖国から解放されて、アストルティアを自由に旅する。それが僕の夢だった。……夢のような時間だった」
 魔王の指が国旗に触れた。布が絡みつく。彼は瞑目した。
 だが夢はいつまでも続かない。やがてゼクレスの政変を告げる使者が訪れ、その夢すらも策謀のために利用されていたと知り……
「目が覚めたよ」
 彼は微笑んだ。諦観と覚悟を伴った、静かな笑顔だった。
「ゼクレスの魔王として、やるべきことをやるよ。母上も、それを望んでるだろうから」
 夢の時間は終わりだ。彼はそう呟いた。
 ……と、黄緑色の燐光がその目の前に降り注ぐ。彼は思わず目を見開き……私はため息とともに目を伏せた。魔王の眼前に妖精の姿があった。 「もう一回眠れば、また夢は見れるよ」
 彼女はピンと指を一本立てる。魔王のまばたき。妖精の悪戯。
「眠りっぱなしじゃ困るけど、寝ないのも大変でしょ」
 彼女は茶目っ気たっぷりの笑みを向けると、弧を描いて宙を舞い、私の肩へと戻ってきた。
 どうやら彼女は、あくまで友人として彼と接することを決めたようだ。なかなか豪胆である。
「どうも……君達には教えられっぱなしだね」
 アスバルは苦笑しつつ肩をすくめた。
 少し、空気が軽くなった。
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