プクランド。広大な草原を横切る素朴な街道を、物々しい装備に身を包んだ馬車が行く。メギストリスから風車の丘を越え、オルフェア地方へ。
オルファの丘はアラハギーロと並ぶ魔物使いの聖地である。魔物学者も多数滞在している。管理人のクラハ氏は魔物使い界の"おかみさん"であり、奥に控えるメドウ老は全ての魔物使いにとって師匠筋にあたる人物だった。捕らえた魔物の分析にこれほど適した場所もないだろう。

爽やかな風吹く緑豊かなオルファの丘に、異形の怪物が横たわる。アンバランスな光景も、取り囲む多種多様な魔物たちに紛れれば自然の一部となる。一通りの調査を終え、魔物学者達は眼鏡を光らせた。
「ううむ、明らかに人為的な手が入ってますね、アカイワ君」
「ほう、キミもそう思いますか、イワノフ君」
博士たちは大岩の体を転がしながら頷きあった。トーレスが気おされたように体を引く。岩石の体を持つ男たち。我々の前にいるのは特注の眼鏡を鋭く光らせる爆弾岩にメガザルロック。
魔物であり学者。すなわち魔物学者。彼らは草原にどっしりと腰を……体全体をおろし、メガネの奥から知的な視線を我々に向けるのだった。

「結論から言うと、これは改造モンスター……何者かによる人工的な強化措置を受けた、言わば生体兵器ですな」
ばくだん岩のイワノフ博士は小さく跳ねて振動と共にこちらを向く。我々は顔を見合わせ、頷きあった。
「生体兵器……やはり……」
「デルクロア博士の見解も、同じだそうです」
と、遠慮がちに声をかけてきたのは管理人のクラハ氏だ。
デルクロア博士は機械魔獣工学の権威であり、道具使いの元締めでもある。偏屈な人物で普段は政府とも距離を置いているが、今回の問題は彼自身にとっても死活問題だった。何しろ彼自身、魔族なのだから。

魔界との関係悪化はアストルティアにおける彼の立場をも危うくする。文句を言いながらも協力は惜しまなかった。
「つまり魔物使いと道具使い、両方の見解が一致したというわけですな」
「ええ……やはり"彼ら"の仕業なのでしょうか」
クラハ氏は物憂げな瞳で我々を見つめた。爽やかな緑の丘に重苦しい溜息が充満する。
兵器と化した魔物たち。それは我々魔法戦士団にとって、そして魔物使いたちにとって、見知らぬ相手ではなかった。
「魔物商人、か……」
私は腕を組む。
魔物商人。すなわちモンスターを違法に売買する犯罪組織。
魔物使いの、そして魔法戦士団の宿敵と呼ぶべき相手であった。