エピソード4「初代スライムパンマン」
スライムパンマン「妖精図書館、ここなら初代スライムパンマンのことが書かれた本があると聞きまして。」
係員「初代スライムパンマン?随分古い本だねぇ、それならそこの本棚の『への五番』にあるよ。」
スライムパンマン「あったあった、早速読んでみよう♪」
『初代スライムパンマン』
その正体は「ただの空を飛べるだけのオジサン」だった。
スーパーパワーで悪を懲らしめるヒーローとは異なり、初代スライムパンマンに出来ることはヒョロヒョロと空を飛ぶことと、アンパンを焼くことくらいだった。
彼には、悪と戦う力が無かった。
スライムパンマンは人一倍優しく、人一倍正義感があるだけのただの人間でしかなかった。
だから彼はパンを焼いた。
悪者を打ち倒す力が無い自分には、貧困や飢餓に苦しむ子供たちに手を差し伸べること位しか、出来る事が無かったのだから。
さえない外見から彼は、同じヒーローたちからもバカにされ、手を差し伸べた子供達からもカッコ悪いと告げられた。
それでも初代スライムパンマンは弱音を吐くことは無かった。
自分が弱くてみっともないことは、彼自身が一番知っていたからだ。
そんなある日、世界で戦争が起きて、子供達に食料がいきわたっていないことを知る。
スライムパンマンは必至でアンパンを焼いた。
戦争を止める力が無いのなら、せめていま苦しむ子供たちを助けるしかない。
たくさんのアンパンを抱えて、彼は子供たちの元へと向かった。
空を飛んで駆けつけたスライムパンマンは、子供たちにアンパンを分け与えた。
おいしそうにパンにむしゃぶりつく子供たちに彼は告げる。
「私は何度でも、アンパンを運んでくるぞ」と。
子供たちは空に消えていくアンパンマンを見送った。世界一カッコ悪いヒーロー、スライムパンマンは真の正義の味方として子供達を救ったのだ。
だが、そこに一発の砲声が轟いた。
直後、空の彼方から、一つの影が地上に真っ逆さまに落ちていった。
それ以来、初代スライムパンマンは話題に上らなかった。
だが、彼が死んだとは限らない。
助けを求める人がいれば、スライムパンマンはまた飛んでくるかもしれない。
なぜなら彼は、正義の味方だからだ。
スライムパンマン「この挿絵の写真、若いころのジャムおじさん!?」
~To Be Continued~ →プロローグ(12月26日)
※やなせたかし先生が、今のアンパンマンを描く前。
1970年創刊の童話『十二の真珠』内のエピソード『アンパンマン』に登場する主人公「アンパンマン」からのお話が元ネタです♪