8 新・魔装展開、ウェナブルー!⑤
「……仰る通りです。私を拾ってくださったマスター・メギウスは、如何に相手を効率よく一撃で仕留めるかという点に重きを置かれていました」
いつの間にか相手の背後に立っており、容赦なく突き立てられる翠刃の短剣――暗殺術を得意とするかつての主により、過去のセバスもまた『一撃で相手を切り裂く』スキルを習得するに至っていた。
「戦団は数を揃えての戦いもそうですが、今回のような単体での暗殺も平気で行う相手です。エリミリアさんもできればこの町を一旦離れ、マユラさんたちに守っていただくというのは――」
エリミリアのパーティーメンバーである彼女たちに頼るのは当然の発想であり、今の彼女にとってはそれが現状で一番の安全策であることは間違いない。だが、
「んっん〜……ごめんなさい、私が狙われたことは、マユちゃんたちには内緒にしといて欲しいの」
「――巻き込みたくない、ということですか」
セバスの問いに、小さく頷くエリミリア。僅かに目を逸らしながら、
「私個人の事情もあるんだけど、冒険のメンバーを巻き込むのはやっぱり……それに何より、マユちゃんの子どもたちが、ね」
小さなプクリポ三姉妹の愛くるしくて少し騒がしい、そしていつも無邪気で楽しそうな姿が思い浮かぶ。マユラを関わらせることで、万が一にも子どもたちに累が及ぶことがあってはならない。
そう察したセバスが、無言で頷いてみせる。彼自身もまた、主のクロム、そしてプクリポリタウンに遊びに来てくれるプクリポの子どもたちを、この身に代えても必ず守り抜く――その誓いを忘れたことは、ただの一度もない。そして、そのためには禍根の元を絶たねばならないのだ。
「……さ、今日はもう寝ましょ。今夜は泊まっていってね? ね?」
当初は宿屋を利用する予定のセバスであったが、エリミリアの好意を無碍にもできず、二階にある彼女の寝室の向かいにある空き部屋――といっても二階にはその二部屋しかないが、今夜はそこでお世話になることにした。
「それじゃ、おやすみなさ〜い♪」
「お休みなさいませ。今夜はよく休んでください、エリミリアさん」
手を振りながら部屋へ戻るエリミリアを見送り、セバスが空き部屋のドアノブに手をかけた時、
「ね、もう少しだけお話ししない?……私の部屋で、ね?」
自室のドアから半分だけ顔を覗かせ――エリミリアが、今度は少し悪戯な笑みを浮かべていた。
――深夜、魔導戦艦バルデアス。
「緊急集合……か」
自身の船室で横たわっていたゼーエンが、軋む体をおしてベッドからゆっくりと起き上がる。激しい戦いを経たかのような消耗を見せるも、その目からは未だギラギラとした闘志の輝きは失われていなかった。
椅子に掛けていた黒いコートを無造作に掴み取り、袖を通した彼が向かった先は集合場所である赤い絨毯の大ホールであった。大きな扉を開けた広がる空間の左隅には、やはり壁を背にもたれかかっていたシキョウが先客として待機していた。
「よォ、ゼーエン。随分とお疲れのようだなァ」
「昨夜の作戦に参加できなかった分、オフで少し体を動かしてきただけだ……それより」
アズール・ドゥジエムである彼は不参加であった、昨夜の作戦――ジンオウとシキョウがカスタムキラーマシンのディザイアを伴い、魔物商人の取引を潰してその身柄を押さえる少人数の電撃戦。
あれからゼーエンは自分以外の幹部とは顔を合わせておらず、自身もセバスとの戦いで消耗した体力を回復してからは単独行動を取っていたことから、作戦の成否に関しては知らされていなかった。
〜8 新・魔装展開、ウェナブルー!⑥へ続く〜