17 魔物商人ウングラ③
ウングラが喋ると同時に、今や強制的に支配されたキラーマジンガ隊がセバスへと振り返る。そのモノアイは不規則に明滅し、この三体が何かしらの不具合に侵されているのは明らかであった。
「では、今度はお前で性能を試させてもらうとしよう。――かかれ!」
命令を受け、多少のぎこちなさを見せつつも三体の殺戮機械が一斉に襲いかかる。シキョウからのハツラツ豆によってアーシュラ戦での消耗から完全回復しているセバスが、全身から爆発的な蒼穹の烈光を放ち――
「魔装展開!」
ウェナブルーに変身したセバスが、まずキラーマシン2の一体へ烈風が如く踏み込み、相手が照準を合わせるよりも速く手刀のオーラが上半身と下半身のジョイント部分を横薙ぎ一閃で両断。速攻で一体を戦闘不能とし、主力のキラーマジンガを含む残り二体へ向けて再びオーラを高める。
「流石は機甲戦団、見事な手際よ。だが俺も悠長に眺めているだけではないぞ」
両手に悪魔の爪を装備したウングラが異様なまでに低い体勢を取り、獣のようにセバスへと踊りかかる。それと同時に残ったキラーマシン2のフレキシブルアームに装備されたボウガンが照準を定め、側面からはキラーマジンガが前進しながら巨大なメイスを振りかぶっており――孤高のヒーローは未だ数的状況において、絶体絶命な状況に立たされていた。
(――だが、一対多数の戦いには慣れている)
戦団時代に敵兵団との戦いを重ねた血塗られし記憶と経験が、セバスの体を的確に動かす。
とっさにウングラと間合いを詰めてボウガンの矢を寸前で回避し、悪魔の爪を手刀で横に弾く。更にはそのまま体を捻って繰り出したソバットをウングラの右脇腹に炸裂させ、その蹴りの反動でキラーマジンガのメイスの間合いからも離れてみせる。
(アーシュラさんのムーンサルトへつなぐ連携を参考にしてみましたが、これは有効ですね)
レッグガードで固めた脚部から放たれた蹴りで吹き飛ばされ、悶え苦しむウングラ。攻め込んでいたつもりが思わぬ反撃を受け、立ち上がることすらままならない。
「ぐがっ……お、おのれ、よくもこの俺に……!」
顔を上げた時、既にセバスの姿はそこにはなく――次にウングラが目の当たりにしたのは、急角度で降下するウェナブルー・アルシオンの一閃により、もう一体のキラーマシン2が袈裟に斬り下ろされて機能を停止する場面であった。
「――貴様を含めて残り二体、私はまだまだ戦えますがね」
手刀を振り抜いてオーラの刀身を顕現させ、セバスがようやく立ち上がりつつあるウングラへ切っ先を向ける。彼自身、決して戦団のために戦っているわけではないが、かつての主メギウスが追ってやまなかった宿敵を目の前にすると、言い知れぬ何かがこみ上げて来るのを感じずにはいられない。
「なめるなよ、戦団の犬が!」
再び低い体勢から踏み込んで来るウングラの右爪が振り下ろされるも、刹那の見切りでその勢いをそのまま左手でいなし、地面へ叩きつけるセバス。
魔物商人の頭目に合気を思わせる得意の護身術を披露した後、すぐにウングラの体を起こして腕を極めつつ自身の前に押し出し、キラーマジンガからの攻撃を防ぐ即席の盾とする。案の定、今はウングラをマスターと認識しているキラーマジンガは攻撃を行えず、モノアイの明滅が一層激しくなっているのがセバスの目にも明らかであった。
やがて元々のスカウトアタックに無理があったのか、明らかにエラーを起こしたような挙動でキラーマジンガが振動を起こし――モノアイから光が消えると同時に、機体が地面へと崩れ落ちる。
「馬鹿な、頭目のスカウトアタックだぞ……!?」
絶対の自信が崩れ去ったのか、セバスに腕を極められた状態でウングラが呻く。一方のセバスは当然だと言わんばかりに、
「やはりマスター・メギウスが組まれたプログラムが、そうやすやすと書き換えられるはずもなかったわけですね」
「ふざけるな! 戦団の首領ごときが書いたコード、どうとでもなるはずだ!」
力ずくでセバスの腕を引きはがし、ふらふらと間合いを離しながら吠えるウングラ。しかしその右腕はもはや使いものにならず、叩きつけられたダメージから既に足元がおぼつかない。
「さて……これまでだ、ウングラ。貴様の悪行は計り知れないが、まずは薔薇のように散ったヴェリナードの勇士達に心から詫びてもらう」
ウェナブルーの目がフェイスガード越しに紅く輝き、そこに一切の情けは見られない。力で全てを蹂躙する戦団のやり方を肯定するつもりは毛頭ないが、ウェナ諸島を始め、世界にはびこる魔物商人の頭目を許さない一点においてのみ、セバスとメギウスの志は一致していた。
〜17 魔物商人ウングラ④へ続く〜