18 恐るべき真相②
「それにしても、ヴェリナードから連れて来た連中には気の毒なことをしたよ。適度に魔物に襲われるふりをしつつ、戦団の連中を押さえた時の目撃者にでもなってもらえれば、俺の立場も安泰だったんだが……あの場でキラーマジンガ共にスカウトアタックをかけた瞬間、即座に襲いかかったものだからさ、俺としても止めようがなくてね。事故ってことで勘弁してくれないかな?」
「よく喋る男だ……!」
今や怒りで身を震わせるセバスが、マユラやレミエルもかくやとばかりの爆速の踏み込みでウングラとの間合いを詰めるも、隣に控えていたレーナが即座に立ち塞がる。その手にはセバスの闘竜の籠手とは異なる、ドラゴンの頭を模した爪が装備されていた。
「キィィヤハァァァ!」
奇声と共に突撃するレーナの右爪を左拳でいなし、即座に右拳を打ち込むも、相手の左爪が信じられない速さでセバスに届く。クロスカウンター気味で互いにヒットし、セバスのボディスーツを竜爪が耳障りな音を立てて削り取る。一方のレーナは横っ面に拳を受けて吹っ飛ぶも、獣のような動きで着地。その時にペッと吐き出した白いものは、彼女自身の折れた奥歯であった。
「俺は人との会話が大好きでね、よく喋るのは会った時からだったろう? エリミリアがお前を連れて来た時は俺の正体がバレたかと思ったものだが、今思えばその緊張感も楽しかったなぁ……。レーナ、直接やりたいならルークと連携を取れよ。幾らビーストモードを使ったとて、タイマンじゃお前と言えども勝ち目は薄いからな」
自身はその場から一歩も動くことなく、ウングラが楽しげに語りかけつつも、部下への指示は忘れない。憎々しげにこちらを睨むレーナと合流するかのように、ルークと呼ばれた赤毛を無造作に伸ばした毛皮ケープの男が、ドラゴンの尾のような鞭を手に前線へと歩み出る。
「こいつらは俺がアラハギーロを放浪してた頃にスカウトした闇の魔物使いでね、さっきの俺の身代わり君とは一味違うよ。とはいえ、元戦団幹部を相手に油断は禁物……もう一度、こいつを使わせてもらおう」
摘んでいた小瓶を落とし、それが岩肌でパリンと割れる。瞬く間に腐臭が辺りに立ち込め、空洞の奥から砂煙を巻き上げながら、怒涛の勢いで魔物達が集まり――ウングラの手勢であるダークパンサーの群れの他、巨大な盾を持ったオーガキングやモーニングスターの死刑執行人ファラリスブル、黄金色に輝くグレイトドラゴンや首なし騎士のスケアフレイルといった原生モンスターまでもが続々と集まる中、明らかに異形の怪物が重い足音を響かせていた。
見上げる程の巨体に長い尾、申し訳程度の小さな翼――鬼棍棒を更に巨大にしたようなその魔物は鎧兜に巨大なハンマー、腹部には十字の中央に目が描かれた十字眼の紋章がくっきりと浮かび上がっている。
「これこそが対機甲戦団ガイデス用の秘密兵器、鋼塊の痛哭将アボク! 加えてこの大群が相手では、例えアズール・プルミエと言えどもひとたまりもあるまい! 果たしてたった一人でこれを突破して、俺のところまで辿り着けるかな? 否、無理だね!」
恐らくは各拠点を襲う兵団の大将格である巨大モンスター〈鋼塊の痛哭将アボク〉を中心とした絶望的な魔物の群れを前に、セバスが覚悟を決める。例え刺し違えようとも、あの男とだけは何としてもここで決着をつけねばならない――魔装のオーラを最大限に高め、彼は奥で控えるウングラに宣言する。
「今の私は……ウェナブルーだ!」
「ルーク! レーナ! そのウェナブルーとやらを丁重にお出迎えして差し上げろ! お前達の魔物使いとしての腕を見せてやれ!」
ウングラの命令を受け、ルークが鞭で地面を激しく打ち鳴らす。その途端、ダークパンサーの群れはおろか、原生モンスター達ですら動きを止めてそれに従う。
「流石は頭目の作ったエキス、野良の奴らにも効果はてきめんと言ったところか……レーナ、やれるか?」
「当たり前よ、ルーク。こっちは面はたかれて歯ぁ折られてんのよ。私はあいつを切り刻む方でやらせてもらうわ」
〜18 恐るべき真相③へ続く〜