19 首領の翠刃、頭目の黒爪④
膝から崩れ落ちてうなだれる兄へ、ゼーエンが困惑しつつも歩み寄る。ウングラが黒爪を装備した手を差し伸べながら、
「ククッ、相変わらずの馬鹿さ加減だ!」
黒爪が容赦なく一閃し、弟の胸元を切り裂く。瞬時に引いて直撃は避けるも、その胸元に血が滲ませたゼーエンが、思わず数歩後ずさる。
「おのれウングラ、何と卑劣な……!」
「必要であれば肉親への騙し討ちも辞さない、奴はそういう薄汚い男なのです」
兄レゼールとしての一面すら利用した、あまりにも卑怯なウングラの不意打ち。蒼いフェイスガードの赤い目を光らせて正義の怒りを燃やすセバスとは対照的に、メギウスの黒いマスクで輝く緑色の目は落ち着いたものであった。
「――どういうつもりだ、兄貴。場合によっては、このまま俺の手で切り刻むことになるが」
ゼーエンが右の拳を虎爪に固め、紺碧の闘気を高めながら怒りで声を震わせる。それとは対照的に、ウングラが歪んだ笑みを見せつつも鋭い爪の先端で指を差しながら、
「それだよ、お前はガキの頃からずっと俺に勝てる気でいる。俺が魔法戦士団に入団した時ですら、親父の期待はお前に寄せられていた。そんな親父が死んだ時は、内心笑いが止まらなかったがね」
左肩にダメージを受け、かつ魔装操者三名を前にしている危機的状況にありながら、未だ余裕を崩すことのないウングラ。かつて見たこともない兄の様相に複雑な心境を隠しきれないゼーエンを嘲笑うかのように、魔物商人の頭目は再び雄弁に語り出していた。
〜20 Secret of Evolution①へ続く〜