20 Secret of Evolution①
「お前は何かにつけてセンスがいいと褒められていたなぁ、ゼーエン。親父はお前にこそ魔法戦士団に相応しいと思っていたようだが、下らない反抗心で家を出たお前のおかげで、比較され続けてきた俺はいい迷惑を被ったぜ。必死で努力して入団したにもかかわらず、だ」
気づけばメギウスによって貫かれた肩の傷から流れ出ていた血は止まっており、普通に左腕を動かしているウングラ。それこそ魔装でもない限り自己修復などあり得ない中、その不自然さをアピールするかのように左腕の爪を振りかざしながら、
「お前を仲間に? とんだお笑い草だな――お前を捕らえようとしたのは、俺がこの手で殺してやるつもりだったからさ。何もできない無力感を味わわせながらな!」
不意に姿を消したウングラの気配を捉えきれないゼーエンだが、その判断は素早かった。どの角度から攻撃を受けても致命の一撃を避けるべく、瞬時に紺碧の魔装を展開する。
「魔装展開――何処から来る、兄貴!」
「お前は地に伏すのがお似合いだぜ、ゼーエン」
まるで影がそのまま質量を有したかのように、ゼーエンの足元からウングラがゆらりと姿を現す。そのまま弟の足を刈り取らんとばかりに、悪魔の爪が横に薙ぎ払われる!
「ぐっ……!?」
ゼーエンが体勢を崩すのと同じタイミングでメギウスがフォトンサーベルを突き立てるも、そこには既にウングラの姿はない。その気配を追っていたセバスがおもむろに踏み込み、一見何もない場所で手刀を一閃させた時、甲高い金属音と共に火花が散り――爪で攻撃を弾いたウングラは、いつの間にか全く違う場所まで転移したかのような動きを見せていた。
「よく俺の動きが追えたな、アズール・プルミエ! ドゥジエムの方は無様に転んでいたものだがな!」
「なるほど、あちらも隠形が得意というのは満更嘘ではなさそうですね」
呟くメギウスがフォトンサーベルを構え直し、ゼーエンが忌々しげにウングラを睨みながら立ち上がる。もはや手加減は無用とばかりに魔装顕現させた爪を兄に向かって突きつけながら、
「そっちがその気なら、俺も徹底的にブチのめしてやるよ……死んでも後悔するんじゃないぜ、兄貴」
「ハッ、まだガキの頃のつもりでいるのか! 今のお前じゃ俺には一発も当てられないぜ、断言してやるよ!」
凶悪な深海竜の爪を連続で繰り出すも、それは全てウングラの黒いマントをするりとすり抜けてしまう。逆に悪魔の爪が紺碧の魔装をガリガリと削り取る耳障りな音が響き、一方的に反撃を食らい続けているゼーエン。
「くっ……何故だ、何故当たらない!?」
「簡単なことさ、勢い任せのお前の動きなど手に取るように分かる。これがセンスにかまけた戦闘ばかりやってきた、お前の現在ということだ!」
以前にセバスと戦った時よりは腕を上げたつもりでいたが、ウングラにはそれ以上に攻撃が当たらない。これまで己の方が強いと見下して来た兄に一撃も有効打が与えられない現実が、ゼーエンに言いようのない焦燥感を募らせていた。チリチリと焼けるようなそれを肌で感じたセバスが、
(ただでさえ実兄が魔物商人の頭目であったことの衝撃が拭いきれていない中、あそこまで精神を乱されては冷静な頭脳など維持できないでしょう。ここで私が手を貸さねば、遠からずゼーエンは墜ちる)
ゼーエンへ駆け寄らんとウェナブルーが一歩踏み出すも、メギウスのフォトンサーベルがそれを遮る。
「あの感じ……ウングラには何かあります。ゼーエンさんを囮にするつもりはありませんが、少しだけ様子を見ましょう」
戦団と袂を分かった今のセバスがメギウスの命に従う必要はない。が、かつての主が下す指示の正確さをこの上なく理解していた彼は、一旦ウングラの動きを冷静に分析する。一見すると攻め込むゼーエンの攻撃を完璧に回避し的確に反撃を入れているウングラだが、セバスの目には徐々に後方へ退きつつ、まるで何かを待っているように見えてならなかった。その時――メギウスのマスクで輝く緑の目が明滅を見せ、
「ウングラから強大な力の反応あり――ゼーエンさん、一旦退いてください」
その指示で我に返ったゼーエンが、即座にバックダッシュで間合いを離した瞬間――
「そろそろだな、ククク……この感じ、来たぞ!」
〜20 Secret of Evolution②へ続く〜