20 Secret of Evolution②
――突如、ウングラの体が急激に膨張を始める!
筋肉や骨格がミシミシと巨大化し、それに伴い全身が深紫の毛皮に覆われる。背には悪魔の翼、頭部には同様の黒い二本角――そして腹部には例の十字眼の紋章が描かれた、痛哭将に勝るとも劣らない巨躯を誇る魔獣と化していた。
「グハハハ……ようやく効いてきたようだな。俺が手に入れた秘薬とビーストモードを掛け合わせて完成させた、素晴らしきこの秘法! もはや伝説の魔祖の血族にすら届き得るこの力、お前達で試させてもらうとしようか!」
今や深紫の剛獣鬼と呼ぶに相応しい進化を遂げたウングラが、地を揺らすような威圧感のある声を大空洞に響かせる。メギウスが与えた傷はすっかり塞がっており、その全身には禍々しい邪悪な力が満ち溢れていた。セバスが両腕のオーラを高めながら、
「マスター・メギウス、魔獣化による超回復が見られます。ここは我々全員の火力を集中すべきかと」
「ええ、そうしましょう。――ゼーエンさん、聞いての通りです。あの化け物は短期決戦で勝負を決めます」
ビーストモードを発動した時点で既に魔獣への進化は始まっており、傷の回復促進もその作用の一部であったと理解するセバス。ウングラからしてみれば当初からルクスガルンで戦団を叩き潰す予定であり、メギウスとの交戦時点で自身が最終兵器となって蹂躙する計画まで立てていたとしても不思議ではない。
「兄貴、化け物になっちまったのかよ……!」
魔装の傷跡から僅かに火花を散らせながらも、ゼーエンが深海竜の両爪にオーラを集中させる。そこへウングラが巨大な両手をハンマーナックルの形で振り下ろし、それが地面へと叩きつけられ――大地を豪快に揺らすインパクトと同時に、岩肌を裂かんばかりの衝撃波が三人の魔装操者を襲う!
(あれを食らってはひとたまりもないが、大振りの隙は大きい)
即死級の攻撃を前に、セバスが冷静な判断を下す。既に飛翔している蒼翼の眼下ではメギウスとゼーエンがすかさず左右に展開しており、ウングラの狙いが一瞬分散される。その隙を見逃す魔装操者達ではなく、フォトンサーベルでの刺突と双爪での斬撃が巨獣の腹部に狙いを定める。上空ではセバスがウェナブルー・アルシオンの態勢に入っており――先に間合いへ届いたのは、ゼーエンの碧刃であった。
(アズール・ドゥジエムが誇る最大の一撃、今ここで見せてやるぜ――タイダル・スクラッチ!)
セバス戦ではオーラが尽きて発動に至らなかった、ゼーエンの必殺技〈タイダル・スクラッチ〉――深海竜の両爪が紺碧に輝く強大なオーラに覆われ、何倍もの質量となって津波のように押し寄せる怒涛の斬撃が、深紫の毛皮をズタズタに引き裂く!
「グ、グオオォォォッ!?」
ウングラの巨体が衝撃で大きく揺らぎ、そこへメギウスのフォトンサーベルが短剣の逆手突きと同じフォームで突き刺さる。エメラルドの閃光がスパークして巨獣が一歩後ずさった時、閃光と共に舞い降りたのは蒼翼の神鳥であった。
(流れるような連携、お見事です。ここで私が詰めを誤るわけにはいきませんね!)
天空から袈裟に斬り下ろしたウェナブルー・アルシオンで連携の締めを飾ったセバスが着地し、遂にウングラがズシンと片膝から崩折れる。それを見たゼーエンが追い討ちとばかりに、
「どうやら見かけ倒しだったようだな、兄貴!」
オーラの爪を突き立てんと更に踏み込んだ時、メギウスのセンサーが異常な数値を感知する。
「いけません、退きなさい!」
自身も即座に回避行動を取るメギウスの声で反射的に後方へ跳躍するセバスだが、ゼーエンの反応が踏み込んだ分だけ遅れ――
〜20 Secret of Evolution③へ続く〜