エピローグ それぞれの交差点①
――それは、機甲戦団ガイデス結成前の一幕。
ウェナ諸島、とある辺境の集落跡――既に廃墟と化したその地の浜辺で、二人の青年が海を眺めながら語り合っていた。
「――で、メギウス。目処は立ったのかい?」
灰色の髪を後ろで縛った白い着流しの男が、切れ長の目を黒いスリーピーススーツの男に向けながら問いかける。少し強い潮風が吹く中、スーツの男――メギウスは横分けにした白い髪を手櫛で整えつつ、着流しの男へ目線を向けて微笑みを返した。
「ええ、魔学の先生つながりの出資者が力を貸してくれていましてね。おかげ様で、魔導戦艦バルデアスの準備は万全です。それより、シキョウさん――」
シキョウと呼ばれた白い着流しの男が、メギウスが言葉を続ける前に肩を竦めてみせる。
「あァ、はいはい順調だぜェ。闇の幻魔召喚術だが、ちゃんと先代から奥義は受け継いでいるさ。これで俺も、お前さんのために戦えるってわけよ」
「ありがとうございます。貴方を巻き込んで申し訳ないとは思いますが、あの魔物商人――ウングラを滅ぼすためには、信頼できる戦力が必要なのです」
懐から翠刃の短剣を取り出し、メギウスが手の中で弄ぶ。それをくるくると回しながら、
「無論、その時は私も戦線に立ちます。そして……記憶を失った、ウェディの彼のことですが」
「あァ、お前さんとこの村の生き残りの奴かい?」
「そうです。今はバルデアスで身柄を預かっていますが、記憶こそ失っているものの、その知見と正義感は見るべきところがあります」
沖合いに停泊していると思しき、今は船影すら見えない魔導戦艦へと視線を送りながら、メギウスが言葉を続ける。
「この島が滅びた記憶は、あまりにも辛いモノ……無理に思い出させることはしません。彼さえよければですが、我が母譲りの戦闘術を伝授した上で、共に戦おうかと考えています」
「何も知らないままの奴を利用するのも、俺ァどうかと思うがねェ。ま、そいつさえよければいいんじゃねェの」
皮肉っぽく返すシキョウへ苦笑しながら、
「彼の正義と私の復讐劇が、人生の交差点で分かたれるまで――少しでも長く肩を並べてくれれば、有り難い限りですね」
再び海の向こうへ向けられたメギウスの目は、まるで結成されて間もない戦団のこれからを見据えているかのように、遥か遠くを眺めていた。
その様子を見たシキョウが不意に真顔へと戻り、懐からスッと般若の面を取り出す。それを静かに被り、彼は首領となるメギウスへ跪くのであった。
「――今この時から、お前さんは俺のボスだ。悲願を成就するその時まで、この仮面と共に身命を賭して戦い続けることを誓いましょう」
〜エピローグ それぞれの交差点②へ続く〜