注意!
この日誌はストーリーのネタバレを含みます!
ネタバレはいや、という方はここでお引き返しください。
勇気と無謀は違います。撤退は恥ではありません。
もう一度言います。ネタバレはいや、という方はお引き返しください。

「いいところですね、ここは」
アストルティアナイトとやらを決める大会に呼ばれ、時をも超えて招かれた世界は平和そのものであった。「ああ、そうだな」
グリエの言葉に、ギルガランは相槌を返す。問答に興味がなかった訳ではない。初めてここに来た日を思い出していたのだ。初めて目にした平和に、彼は目を覆った。眩しすぎたからだ。決して溢れる涙を隠すためではない。目が眩んでしまったのだ。だから、目が霞み景色が歪んでしまったのだ。
そんな彼の胸中を知ってか知らずか。
「兄さんも色んな冒険者さんに囲まれて、さぞお楽しみだったようですね。でも、そのような生返事ばかりでは寂しくなってしまいますよ」
まるで悪戯でも企んでいるかのような笑みを浮かべながら、グリエは「兄」の無骨な胸板に頭を押し付ける。柔らかな髪が肌をくすぐる感触に、ギルガランは僅かに身を捩らせた。
「戯言を言うな。俺があの冒険者とやらなどに気をとられるわけがないだろう」
そう答え、ギルガランは「兄」にじゃれつくグリエを抱きしめた。
「兄さん?」
離れるか、小突くか。そんな応対を予想していたグリエが困惑する。ギルガランの締め付けは、グリエが痛みを感じないよう優しく、グリエがどこにも行けないよう強いものであった。
「この宴が終われば、あなたはまた俺を置いて星の海へ帰ってしまう。だというのに、他のものに回す気など俺は持ち合わせていない」
不意に、グリエの肩に雨粒が落ちた。ギルガランの両の眼から止めどなく溢れる、熱い雨が。
「僕は、君を置いて行くために星の海に行くのではないよ、ギルガラン。君を、君だけをいつも見守るために行くんだ」
グリエが腕の中でくるりと向きを変え、兄弟は互いの体を抱きしめる。
「ギルガラン。そんなに泣かないでおくれ、僕の最愛の弟」
「にい、さん・・・」
グリエが耳に唇を寄せ、囁いた。自分の全てを包み込んでくれるような抱擁に、ギルラガンの思考は麻痺していく。霞む視界いっぱいに、兄の顔が映る。
運命が引き裂いた兄弟の影が、足りないものを求め合うように交じり合い、そして

アンちゃん「恥晒してないで大人しく撤退してなさい!」
退けない戦いも、あるんだよ・・・!
アンちゃん「殴るわよ! これは退くべき戦いでしょうが!!」