【前書き】
この日誌は、長期の運営により、DQシリーズ随一の長大かつ壮大なストーリーと世界の広がりを持つこととなったDQⅩの世界観について、DQⅨとの繋がりに注目しつつ読み解く考察記事です。
“その1”と題している通り、テーマごとに複数の日誌に渡って記事を書いていく予定です。
シリーズでも類を見ない重厚な世界設定を持つDQⅩについて、今まで考えてきたことを文章にまとめておきたいというのがこの記事を書く出発点ですが、DQXの世界観について深く楽しみたい、という方にも興味を持って頂けたら幸いです。
なお、この日誌シリーズにはDQⅩのメインストーリー(現時点で7.4まで)、サブクエ、各種コンテンツ、そしてDQⅨについてのネタバレが含まれます。むしろネタバレ“しか”ありません。
また、ゲーム内外で得られる情報から考察される事柄に関して、同じような内容の考察を先行して発信されている方がおられるかもしれません。その旨も予めご留意ください。

【開発経緯から見るⅨとⅩの関係性】
ⅩがⅨと世界観的な繋がりを持っていることは、両作をプレイしてご存知の方も多いでしょう。具体的な世界設定については今後触れていきますが、ここでは両作がそうした繋がりを持つに至った開発上の経緯について簡単にご紹介します。
まず、後のⅩとなるオンラインゲームの開発始動後、携帯機であるDSで、すれ違い通信やマルチプレイを利用したDQ作品のプロジェクトが始まります。その作品にⅨのナンバリングが与えられ、当初Ⅸとして始動していたオンラインゲームがⅩとなりました。
両プロジェクトは同時に進行しますが、Ⅸの開発が難航し、Ⅹの初代ディレクター(藤澤仁氏)がⅨの開発に出向いたため、Ⅸの職業システムがⅩのそれと類似していたりします。また、Ⅹのシナリオチーフ(成田篤史氏)はⅨのシナリオチーフでもあります。
また、DQシリーズの序曲のイントロは大きく分けて、ロトシリーズ(Ⅰ~Ⅲ)、天空シリーズ(Ⅳ~Ⅵ)以降の2つでしたが、ⅨとⅩでは“新シリーズ”の構想により新たなイントロになりました。
こうした経緯が両作の世界の繋がりの背景にあったのでした。
【両作に共通する世界観の特徴】
ⅨとⅩの世界設定の詳細は次回以降でまとめていきますが、今回は最後に、両作の世界観に共通する特徴についてご紹介します。
両作の世界観において共通して感じられる特徴。それは『神話』と『星』です。
まず『神話』について。
どちらの作品でも世界を創ったり、守護したりした神々の存在が語られ、それが世界観の根底となっています。そして、神々やその眷属たちは聖なる存在ですが、中には傲慢さや憎悪などの負の面を抱えた者がおり、エルギオスやナドラガ、ゼネシアのように邪悪に堕ちてしまう者が登場します。
ロトシリーズのルビス、天空シリーズのマスタードラゴン、Ⅶの神さまなど、神や創造主について触れたDQ作品は他にもありますが、ここまで明確で具体的に神々について扱ったのはⅨとⅩが初めてでしょう。
次に『星』について。
Ⅸのサブタイトルは『星空の守り人』(その意味はまた次回以降で)であり、Ⅹにも登場する「星のオーラ」が作中のキーワードの1つです。
Ⅹにおいては、アストルティア自体が『星』『惑星』などと表現されることはありません。しかし、月世界と異星からの侵略者リルグレイド、宇宙船アルウェーンやキュロン人の航界船、ザグバン丘陵のクレーター、大エテーネ島に飛来する隕石など、DQ作品としては珍しく、宇宙を感じさせる要素が散見されます。ジア・クト念晶体に至っては、宇宙人や宇宙船などの直接的な表現はされずとも、それらをモチーフにした設定であることは明白でしょう。
また『アストルティア』という世界の名前について。後半部分は創造主である女神ルティアナの名と共通しており、実際に女神が自分の名から取ったと誓約の園の自室に記録を遺しています。そして前半部分ですが、『astro』(星の、天体の、などを意味する接頭辞)から来ていそうです。世界の名前自体にも、『星』や『宇宙』の要素が隠されているのかもしれません。
このようにⅨとⅩは『神話』が世界背景として明確に存在し、神々やその眷属の悪の面も描かれており、『星』が作中のキーワードになったり、SFも含めた『宇宙』的な要素も世界観に盛り込まれているシリーズなのだと私は捉えています。
【終わりに】
興味を持ってもらえる方がどれだけいるかわかりませんが、次回以降はより具体的な設定や描写に触れていきます。
次回“その2”は、2作品の繋がりを探る準備として、Ⅸの世界設定と物語の概略についての解説が主になる予定です。