私の名「しろいコキン」の由来、それを説明するには、まず「コキン」の部分から解説する必要があるだろう。
コキン、それは、とある国民的作品―尤も、日本国内においては知らぬ者なしの知名度であっても国外においては一部地域を除き人気を得るに至っていないが―の登場人物の名である。
コキン、その者は、ドラゴンクエストでいうところのロザリーのように、涙に特殊な性質を帯びる。
だが、コキンはロザリーのように欲深い人間に狙われることはない。
その特殊な涙の力により、近付き害為す者を退けることができるのだ。
私の名は、弱さの象徴たる涙を強さに変えた人物の名に由来している。
さて、では何故「しろい」なのか。
これを説明するには、時を4年前に遡る必要があるだろう。
それはドラゴンクエストX目覚めし五つの種族オンラインがまだベータテスト中だった頃。
ベータテスターに当選していた私は、当時、単に「コキン」と名乗っていたのだ。
ベータテスト期間からの付き合いがある者には、蒼かった頃の私を覚えている者もいることだろう。
ドラゴンクエストX目覚めし五つの種族オンラインは、名前を自由に付けることができるゲームである。
そのようなゲームにおいては、有名な作品の登場人物の名を付ける安易な行為が広く横行する。
果たして「ルフィ」という名のキャラクターが本作品内に幾人いることだろうか。
そして残念ながら、私もまたその安易な行動に走った者の一人だったのだ。
大規模多人数同時参加型オンラインロールプレイングゲームである本作においては、このような名付けは不都合を生む。
当然、製品版への移行を機に名を改めることを考えた。
しかしながら、私は既に、「コキン」という名で、幾人もの仲間と出会い、「コキン」として冒険を続けてきた。
「別れたくない。」
最早「コキン」という名は私の一部だったのだ。
「コキン」を失うと、私は私でなくなってしまう。
「コキン」という名を捨てることは、「コキン」としての私が存在しなくなることと同義なのだ。
また、名は言霊を持つ。
先程、有名な作品の登場人物の名を付けることを安易な行為と詰ったが、本当は、名前が被り易い点以外は、決して悪い行為ではない。
有名な名には、その名自身に、意味や印象が伴う。
先程の例でいえば、「ルフィ」という名のキャラクターに出会えば、きっと貴方は海賊王を夢見る若者を想起し、その活発な印象をその者に重ね合わせることだろう。
当然、「コキン」にも様々な印象が伴う。
だが、それは良い印象ばかりとは限らない。
「コキン」という名には、「嘘吐き」「身勝手」という印象もまた伴う。
私は「コキン」という名に別れを告げずに、この悪印象を払拭する手段を考えた。
引けないならば足せばよい。
悪印象を上塗りして払拭できる言葉、それは、清さ、正しさを表す「白」であった。
この「白」を平仮名の連体形にしたのが「しろい」の部分である。
以上が、私の名「しろいコキン」が決定した経緯であり、その名の由来である。