「ったく、なんでドワ子の応募がねーんだよー」
誰に言うでもなく、愚痴を吐き出すアンダーソン。
手にしたグラスのウーロン茶は、もうすでに5杯目だ(注:アンダーソンは飲めません)。
グデグデになったアンダーソンに普段の気遣いなどなく、周りのメンバーを困惑させた。
それを見かねてエルフのガリクソンがたしなめる。
「おいアンダーソン、さすがに飲み過ぎだぞ」
中学からの付き合いであるが故か、アンダーソンも遠慮はしない。
「うるへー、俺がどんだけ頑張ってると思ってんだー」
「いいから、もうそれぐらいにしとけって」
そんなやり取りを見て、レイレーンが困惑した表情で問いかけてきた。
「え…?てか、リダ…。飲めない、よね…?」
てつやも続く。
「茶番だな」
金髪コンビは某戦闘民族を連想させるが、まさにその通り。
我がチームのツートップである。
「目の前の辛い現実から逃避」スキル100振りのアンダーソンに彼らの言葉が届く訳もなく、相変わらずくだを巻くばかりだった。
「はいはい、どーせ俺は飲めませんよー!飲めないし、ドワ子一人チームに入れられないダメリーダーですよー!使えないサカナ男子ですよー!」
ウーロン茶は既に8杯目になろうとしていた(注:アンダーソンは本当に飲めません)。
「大丈夫、アンさんは頑張ってる」
押してダメなら引いてみろと言わんばかりに、どこぞのウェディ男子も真っ青な恋愛テクよろしく、キャロラインが言葉を投げかけた。
えへへ、と感情の無い笑みを見せるアンダーソンに、キャロラインは更に投げかけた。
「まぁ、私ログインしてないからよくわからないけど」
アンダーソンの目は笑っていなかった。
「だいたいなー、俺がこんだけやってるのに問い合わせの1件も無いってのはどういう了見だ!?って話で、じゃあどうやったら応募がくるのか必死に考えて他のチームの募集を交流酒場に見に行ったら『みんなで楽しく明るいチームです!』とか『必要最低限のマナーを守ってくれる方なら誰でもOKです!』とか、そういのばっかでなんだかどこ見ても同じような募集で気が付いたら仕事の手も止まって早1時間だっつーのに、問題解決の糸口すら見つからねーってばよ!」
普段の仕事が忙しすぎるせいか、アンダーソンの言っていることは支離滅裂であり、既にその言葉を理解出来る者はこの場にはいなかった。
レイレーンという例外、ただ一人を除いて。
「それはリダが悪いんだってばよ!」
理解していたのではない。
某忍者の口真似がしたかっただけなのだ。
「リダ、、、とりあえず僕も頑張るっすから、もう少し粘ってみるっす」
チームのマスコットであるエドラッシュはいつも前向き、ポジティブシンキング。
裸にサングラスで狐のお面なんて、ポジティブでなければ出来ない。
そんな彼の優しさも、今のアンダーソンには届かない。
「モフモフ、いいね…!」
12杯目のウーロン茶が空になった(注:しつこいけど飲めないからね、俺)。
「あと、ちゃんと仕事しなさい!」
エドラッシュの激励はいつも助かる。
チームのことはチームみんなで考えよう、そういう名目で集まったにもかかわらず、召集をかけたアンダーソンがこの調子では話にならない。
気づけば、いつの間にかアンダーソンは寝息をたてていた。
「しょうがない、今日はもうお開きにしよう」
サブリーダー権限をここぞとばかりに発揮したガリクソンが、場を収めようとまとめ始めた。
うん、そだね、と他のメンバーも続く。
最後の最後までアンダーソンを「斬る」と言って聞かないてつやだったが、周りのメンバーに説得され渋々はやぶさの剣を鞘に納めていた。
つづく